世界の中心で平和を叫ぶ。第2部 39
「け、啓太様・・・?」
キレた啓太の変貌振りに心やウエイトレスたちだけでなく、薬に侵された彩夏たちですら驚愕でその動きを止める。
しかし啓太はプイッと背を向けると、2回も薬を投与された薙の元へと向かう。
薬を打たれた薙は、欲望に負けまいと必死に抗っていたが、身体は持ち主の意思に反して彼女に自慰をさせることを強要していた。
しかし啓太は、つい先ほどまでキレていたとは思えない、優しい声を薙にかけた。
「・・・大丈夫か、薙?」
「ああっ・・・啓太殿ぉっ。申し訳ありませぬ・・・拙者は拙者はぁッ・・・!」
あまりに無様な姿を見られ、薙は泣きながら自慰をする。
しかし啓太の瞳に軽蔑や悲嘆の色はない。
相変わらず菩薩のような微笑みで薙を励ました。
「気にするな。バカどもを黙らせて、すぐに治してやるから。
それまでちょっと待っていてくれ。な?」
トンッ・・・、
啓太は泣きながら謝る薙に当身を食らわせ、眠らせてやる。
そして薙をそっと寝かせてやると、今度は悪鬼のごとき形相で心をにらむ。
「ヒッ・・・!?」
「心・・・今回はよくもまぁ、いろいろとやってくれたなぁ・・・!?
せっかくいろいろ楽しませてくれたんだ、今度はこっちが楽しませてやるよ・・・!!」
怒りのオーラを活火山のようにたぎらせながら、啓太は心に近づいていく。
オシオキする気なのは誰の目から見ても明らかだ。
身の危険を感じた心は、すばやく体内で即効性の麻痺毒を調合して爪に滴らせる。
そして毒を仕込むために逃げるフリをして、油断を誘う。
「逃げられると思ったいるのか、このおバカがッ!?」
案の定、乗ってきた啓太は、すかさず捕まえようとその手を伸ばす。
もうこれで啓太は動けない・・・そう心が確信して啓太の手首に爪を突き立てた!
「ッ!?」
「どうした?自慢の爪がどうかしたのか?」
心はあわてた。再び爪を強く突きたてる。
しかし啓太はなぜか平然としている。
この爪は心の主武器の1つにして、そこから滴る毒は即効性のものだ。
人間の啓太の皮膚を破れないでだけでもおかしいのに、毒に触れて平然としていられるわけが――!?
パンッ!
心が動揺しているスキに啓太が心をひっぱたいた。
その時になって、心はようやく気がついた。
いつの間に啓太は両手の拘束を外したのだ、と。