世界の中心で平和を叫ぶ。第2部 33
味方にも容赦のないそのやり口に啓太は一瞬目の前の女がホントに組織の者か疑ってしまう。
だがこーゆーヤバい性格も、主人に忠実な怪人ならではの考え方であることに間違いはない。
やられるほうはたまったものではないのは言うまでもないが。
しかし幹部クラスの怪人をこうも簡単に手玉に取る腕前に、啓太はその正体を知らずにはいられなかった。
「オマエ・・・一体何者なんだ?
一体どうやって幹部クラスの怪人を・・・?」
「あら、つれない。私のことを覚えておられませんか?」
(覚えているわけないだろっ!?
ウチの組織が一体何人いると思っているんだよっ!?)
・・・とツッコミたくなるところを、啓太は何とか飲み込む。
ご主人様である啓太をためらいなく拉致するような相手だ、うかつに刺激しないに越したことはない。
「・・・ふぅ。仕方ありませんね。
それでは改めて自己紹介させていただきましょうか。
今度は忘れちゃイヤですよ?」
ここまでするような相手を忘れるわけはない、と心の中でツッコむと、店長は本性を現し始めた。
メキッ・・・!メキメキメキィ・・・ッ!
背中から昆虫系の半透明の翅が生え、額からは一対の触覚が伸びる。
ふっくらとしたおしりからは虎縞のコブが膨らみ始め、身体には虎縞と六角形の模様が出現する。
爪は鋭く長く伸び始め、色とりどりの毒々しい液体が滴り落ちる。
今まで人間の姿で行動するように言っていたのですっかり忘れていたが、改めてこういうところを見せつけられると啓太は自分が非日常的の中にいることを改めて実感した。
そしてとうとう店長は元の姿に戻りきった。
その姿からイメージされるのは・・・!
「私は元医療部所属の怪人『アマゾネス・クインビー』。
啓太様からいただいた人間名は蜂須賀心(はちすか・こころ)と申します。
本日は当レストラン『デリシャス』の店長として本日限りのスペシャルメニューをお楽しみください♪」
啓太だけでなく読者ですらわかるような展開。
鮮度抜群、肉汁たっぷりの料理と食材の数々に、啓太はキツい食あたりをしないことを願わずに入られなかった。
「その爪・・・いや、針か?それを使って、空たちをあんなふうにしたんだな」
気を取り直した啓太は爪から滴る見るからに毒々しい爪を見ながらつぶやいた。
店長が蜂の怪人で、毒を操る怪人なら薙すらも押さえ込んだのも納得できる。
「ふふっ・・・60点、と言ったところですかね。
私がやったのは空様と彩夏様で、薙様はこのコたちがやったんですよ」
心は軽く指を振る。すると・・・。
ブゥ・・・ン・・・。
彼女の身体から何匹、何十匹もの蜂が姿を現す。