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世界の中心で平和を叫ぶ。第2部
官能リレー小説 - SF

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世界の中心で平和を叫ぶ。第2部 315


クロックがそう言ってその場を立ち去った1時間後。
三方町からすべての生命が姿を消した。
アパレント・アトムのように撤退したわけでも、ザウルスペクターのように壊滅したわけでもない。
マジックのようにただ姿を消したのだ。
死体も血痕も、そこにいた証拠を何1つ残さずに。
謎に満ちたこの事象は世間には知られることなく、後日の報道には『ヒーロー協会、三方町から悪の組織を撃退』とだけ公表された。
わかっているのはただ1つ。
町に集まっていた怪人たちをヒーロー協会が何らかの方法で皆殺しにしたということだけだった。
こうして啓太たちアパレント・アトムとザウルスペクター他、さまざまな組織入り乱れての大乱戦はヒーロー協会の勝利(?)という不可解な形で幕を下ろしたのであった。

――――

「え?しばらくの間、地下に潜る?」

それから1週間後。
いまだ戦後処理に追われるアパレント・アトムの基地で、啓太はクロックからそんな話を聞かされていた。

「はい。この間の戦闘で受けた組織のダメージ。
 そしていまだ残っている戦後処理のことを考えると、
 しばらくはおとなしくしているのがよろしいかと思われます」
「・・・確かにな。やらなきゃいけないことは山のように残っていることだし・・・」

クロックの言葉に真剣に耳を傾ける啓太に、クロックはなぜか眉をひそめて重いため息をついた。

「・・・啓太様。お言葉ですが、それでしたら執務室に戻るべきかと。
 なぜ啓太様がこのようなところで、こんな雑務をやっておいでなのですか?」

今啓太たちがいるのは医療部の入院病棟。
ここで啓太は入院を余儀なくされた怪人たちのために食事を運搬している真っ最中であった。

「執務室で仕事しろったって、やることはただのハンコ押しだろ?
 オレには内容もわからないし・・・。
 だったらせめて自分の能力に見合ったことをやりたいんだよ」
「でしたらまず、組織の長として精進するべきでしょう。
 このようなこと、配下の怪人たちに任せておけばよいのです」

啓太の弁に、クロックは痛む頭を押さえながらそう進言した。
確かに啓太は性格的にも素質的にも、上に立つ人間ではない。
しかしクロックたちから見れば、啓太は自分たちの主人だ。
なのにこの男と来たら・・・。

「組織の長ってのには興味ないけど・・・。
 またみんなの足引っ張ったりすることないようにがんばるよ。
 ああ、もう2度と、な・・・」

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