世界の中心で平和を叫ぶ。第2部 312
そう答えるのが精一杯の、情けないご主人様であった。
――――
驚きのパワーアップを果たした啓太は、その感覚に慣らしながら、地上に向かってひたすら急いだ。
こうしている今も、地上ではいろんな人たちが傷ついていることだろう。
敵も味方も、無関係な人たちも。
そりゃ襲ってきた敵に対しては同情の余地はないが、それでも殺していいなんて思わない。
味方であるアパレントの面々や、無関係な一般人のみなさんは言うに及ばずだ。
(早くこんなくだらない戦い、やめさせなきゃ!
・・・手遅れになる前に!)
脳裏によぎった最悪の展開を振りほどきながら、啓太は地上に向かってただひたすら前進する。
そしてようやく地上に戻った啓太が目にしたものは―――?
「・・・へ?」
「何々、どったの?・・・お?」
あっけに取られる啓太の背後から、いつの間に追いついたのか、レックスがひょいとのぞいてみれば。
そこには瓦礫と屍の山の前で、ボロボロになりながらも楽しそうに談笑しているアパレント・アトム所属の怪人たちが、いた。
「おや、すっごい。もう全員倒しちったんだ。ちょっと意外〜」
「あ〜、啓太様だ〜!」
「え?啓太様ですって!?」
「け、啓太様!何でまたここにいるんですっ!?お怪我は大丈夫ですか!?」
「あ、あわわわっ!ちょちょ、ちょっと待って啓太様!
今の泥だらけの私を見ないで〜っ!」
レックスが感心する中、啓太は仲間に気づかれ、動物園のパンダよろしくあっという間に取り囲まれる。
パンダと違うのは、啓太がおさわりOKというところか。
啓太はキスやら胸を押し付けるやらの熱烈な歓迎を受け、もみくちゃにされながら怪人たちに訊ねた。
「ちょっ・・・おいこら、やめ・・・!
た、戦いのほうはどうなったんだ!?誰かオレに説明してくれっ!?」
しかし命がけの戦いで、啓太成分に飢えていた怪人たちは止まらない。
いっそ強制権で黙らせたほうが早いか?
啓太がそう思いかけたその時だ。
「何をしている、このバカモノどもっ!!
啓太様が嫌がられておられるだろうがッ!?」
何者かの怒声とともに周囲で次々と爆発が起こって周囲の怪人たちがギャグマンがよろしく吹っ飛んだ。
そしてモーゼの十戒のようにできた道を通って、見覚えのある怪人が3名の部下を引き連れてやってきた。