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世界の中心で平和を叫ぶ。第2部
官能リレー小説 - SF

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世界の中心で平和を叫ぶ。第2部 310

止めたくても止められない自分のふがいなさに涙しながら、黙々と。
その様子に啓太は安堵のため息を1つつくと、大切な仲間を連れ戻すために治療現場を歩き始めた。
・・・平然とついてくるレックスを連れて。

「〜〜〜♪」
「・・・ちょっと待て。何でおまえがついてくる?
 オレの邪魔をするなと言っただろ?」
「え?邪魔しなければいーんでしょ?」
「いいわけあるかっ!?いいか!?
 オレはおまえらにケガとか死んだりされたくないから、ここに残れって言ってんだよっ!?」

屁理屈にほどがある返事に、啓太はレックスが命令を聞かないことも忘れて思いっきり大声で怒鳴った。
それにしても、なぜレックスは啓太の強制命令を受け付けないのであろうか?
周囲の怪人たちもそれが不思議で仕方がないが、今は主人が死ぬかもしれない非常事態だ。
彼女たちは一縷の望みを託して、見ず知らずの怪人に啓太を止めてくれと思った。
ここに来る前は、目の前の女が自分たちの敵だったとも知らずに。
もっとも知ってても何もできないのだから、結果は変わらなかっただろうが。
普段ならここでコントの1つでも始めるところだが、今は非常事態だ。
これ以上付き合ってられるかとばかりに啓太はグッとこらえると、レックスを無視して野戦病院状態の医務室を後にする。
そして一刻も早くこんなくだらない悲劇を終わらせるため、啓太は地上に向かって一直線に駆け出した・・・が。

(ぅわっ!?な、何だこれ!?)

自身に起きた突然の変化に、啓太は驚きを隠せなかった。
以前は鎧のせいでこんなに早く走れなかったはずなのに、今は驚くほど軽く早く走ることができる。
さすがにケイロンに乗っていたときよりは遅いが、段違いの速さだ。
あまりの速さに啓太が気を取られていると。

(啓太様。右から通行人が来ます。ジャンプしてかわしてください)
「へ・・・?って、わあッ!?」
「きゃああぁぁッ!?」

パラサイトがつぶやいた次の瞬間、横から女怪人が1人飛び出してきた。
啓太は驚いて、とっさにジャンプして通行人をかわそうと試みる。
こんな試み、普通は失敗して終わってしまうはずなのだが・・・。
今回はその予想を裏切る結果となった。

トンっ!

「うわわわっ!?」

ジャンプした瞬間、啓太の身体は天井に『落ちて』いった。
否、違う。あまりに強い力でジャンプしたので、そう錯覚しているだけだ。

(ぶつかる―――っ!)

そう思った次の瞬間、啓太の顔から表情が消え、本人の意思とは無関係に動いた右手が天井に手を置いて、激突の衝撃を受け止めてしまった。
そしてその反動を利用して再び地面に着地。
呆然とする女怪人を残して、啓太はそのままその場を後にした。
時間にして数秒のできごとだったが、元一般人の啓太にはできるとも思えぬ、奇跡の連続であった。

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