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世界の中心で平和を叫ぶ。第2部
官能リレー小説 - SF

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世界の中心で平和を叫ぶ。第2部 309

だが自分のために何もかも差し出し、身を粉にしてくれるような連中を見殺しにするつもりはなかった。
啓太は自分のすべきことを考え、まとめあげると、ある怪人の名前を大声で叫んだ。

「パラサイトっ!」
(は)

いつも以上に冷たく、機械的な答えが啓太の脳に直接響いた。

「これから夢とクロックたちを回収しに行く!
 悪いけどもう1回オレに付き合ってくれ!」
「は。かしこまりました」

やけに機械的でバカ丁寧な反応に違和感を覚えるも、今はそれどころではない。
啓太は早く犠牲者を減らすべく再びベッドから跳ね起きた。
それと同時に啓太の身体に鎧が展開される。
今までの鎧は防御力重視で、いかにも『鎧を着ていますよ』といった感じであった。
しかし今展開されている鎧はちょっと違う。
以前より鎧と啓太の一体感が増し、『鎧を着た人間』というより『鎧のような皮膚を持つ人型生物』みたいな無駄のないフォルムになっている。
その証拠に、鎧を展開しているにもかかわらず、その動きはまったく損なわれていない。
元一般人の啓太でもその違いに気づいたらしい。
歩みを止めて手を動かしたり握ったりして、その感触を確かめている。
その様子に、見ているナース怪人も目を丸くしている。
それはそうだろう。
報告で大ケガをしていたところを夢が治したのは聞いていたが・・・。
病み上がりの半人前である啓太が、これほど能力を使えるとは、思ってもいなかったのだ。

「―――何だ?何か妙に調子いいけど・・・。
 おまえら、オレの身体に何かしたのか?」
「い、いえ!わ、私たちは啓太様のお身体に異常がないか、診察しただけで・・・!
 け、啓太様こそお身体のほうは大丈夫なんですか?」
「・・・え?おまえらが治療したんじゃないのか?」

てっきりそうだとばかり思っていた啓太は、意外そうに声を上げる。
啓太は夢が傷を治してくれたことを見ていたはずなのだが・・・。
どうやら治療前後の記憶があやふやになっているようだ。
啓太はそのことに少しだけ不安を感じたが、それ以上にしなければならないことを思い出し、それ以上考えることをやめた。
そして呆然とするナース怪人とレックスを置いて、啓太は個室を後にする。
そこに広がるのは、大ケガをして痛みに悶え苦しむアパレント・アトムの怪人たち。
啓太はそんな彼女たちに向かって大声を張り上げた。

「よく聞け、おまえたち!
 オレはこれから上に行って、まだ戦ってる連中を連れ戻してくる!
 『邪魔することは一切許さない!
 おまえらはここでケガの治療でもして待っていろ』!」
「「「「「・・・・・・!!」」」」」

強制力を使っての命令に、怪人たちは反論することもできない。
だが内心では自殺行為としか言いようのない発言に、誰もが啓太を止めたいと思っている。
しかし悲しいかな、所詮怪人は消耗品の道具。
彼女たちは怪人としての本能に逆らえず、黙って治療を再開した。

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