PiPi's World 投稿小説

世界の中心で平和を叫ぶ。第2部
官能リレー小説 - SF

の最初へ
 294
 296
の最後へ

世界の中心で平和を叫ぶ。第2部 296

そしてその液体と一緒に人間の姿に戻った啓太が流れ出る。
夢は自らが濡れるのもかまわずに啓太を抱きとめると、そっと啓太を地面に横たえた。
眠り続ける啓太の身体には傷1つなく、夢が別人のようになったきっかけであるあの傷も、傷跡も残さず消えてしまっている。
安らかな寝息を立てる主人の様子に、まだ以前の記憶が残っているのか、夢がホッと安堵の微笑みを浮かべたその時だ。

「貴様ら!そこで一体何をしている!?」
「ッ!?」

そこに巨大な銃を構えた金色の戦士が姿を現した。
その戦士の名前はゴルディアース。
かつて全世界の悪の組織と戦い、その活躍から5英雄と呼ばれている本物のヒーローであった。
その姿を見たケイロンはあまりのタイミングの悪さに、舌打ちを禁じえなかった。
この状況では、『自分たちは怪しいものです』と言わんばかりであったからだ。
現場には見るからに怪しい巨大な繭2つに全裸で倒れている青年が1人。
そしてそれを介抱している謎の女と、半死半生で倒れているケンタウロス怪人。
どう言い繕っても言い訳できない状況だ。
しかも逃げるにしろ戦うにしろ、相手は新参怪人のケイロンでも知っているヒーロー、ゴルディアース。
いくら今の夢が規格外に強いとは言え、どうにかなる相手とは思えない。

(かくなる上は・・・負傷している自分が盾になってでも・・・!)

ケイロンは悲壮なまでの覚悟で立ち上がろうと試みる。
しかしレックスから受けたダメージはやはり大きく、立ち上がることさえままならない。
ゴルディアース(鬼瓦)は、その様子からケイロンが自分の脅威となりえないと判断しつつ、夢たちのほうへ視線を向ける。
敵がすぐ背後に迫っているというのに、夢はまるで無関心で、逃げる気配すら見せようとしない。
自分の存在にすでに気づいているはずなのに、完全無視を決め込んで背を向けているというありえない反応に、ゴルディアースはわずかに興味を引かれた。
彼はいつでも戦えるよう、注意を払いながら夢に声をかけた。

「・・・なぜ、おまえはその人間を助ける?その人間はおまえの主なのか?」
「・・・ある、じ?」

その言葉に夢は虚をつかれたようにつぶやいた。
違う。この人間は自分の主人ではない。自分の主人は他にいる。
しかし心のどこかでこの人間は自分の主人だと叫んでいる自分がいる。
まったく相反する2つの答え。
夢はそれに対し、どう答えてよいのかわからなかった。
それに対し、ゴルディアースは怪訝そうに質問を続けた。

SNSでこの小説を紹介

SFの他のリレー小説

こちらから小説を探す