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世界の中心で平和を叫ぶ。第2部
官能リレー小説 - SF

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世界の中心で平和を叫ぶ。第2部 295


なおもあがき続けるレックスに、夢が淡々と語りかける。
しかしそこにはあざけりも勝利の愉悦も、何の感情も入っていない。
ニュースキャスターが淡々とニュースを読み上げるように、事実だけを告げているような、そんな冷たい言い方だった。
だが相手は裏社会に名を馳せた、筋金入りの戦闘狂。
この程度のことであきらめるわけがなかった。

ゴキッ!ゴキボキパキッ!

「ッ!!間接を外して、無理やり脱出・・・を・・・!?」

だがケイロンの考えはまだ甘かった。
レックスはこの時すでに、次のステップまで考えていたのだ。

ゴギュッ!!

「なっ・・・!?」

レックスは全身に絡みついた糸から逃れ、さらに反撃するために自ら左手を恐竜の首と化した右手で食い千切ったのだ!
そして左手の傷口とそれを食った右手から、大量の血液を噴射した。
不可視の糸をあらわなものとしたのだ。
あまりにデタラメで、無茶苦茶な戦法であった。
だが。そんなレックスの捨て身の戦法も、今の夢の前にはまったくの無意味だった。
なぜなら今の夢は実力も戦術も、すべてにおいてレックスの上を行っていたのだから。

「「なっ・・・!?」」

不可視の糸が真紅に染まった瞬間、無数の糸はすでにレックスを捕縛するべくすぐそこまで迫ってきていた。
さすがのレックスも、こんな大量の糸がすでに近くまで来ていたとは予想していなかったらしく、レックスは再び赤い糸に捕縛された。
しかし夢はそれでも攻撃を緩めない。
やがてレックスの身体は糸で覆われ、身体の輪郭さえもわからなくなり・・・やがてそこには1つの大きな繭だけが残された。

――――

(苦戦していたはずの相手をあれほどまでに簡単に倒してしまうとは・・・。
 いったい夢様に何があったと言うのだ?)

鳥肌の立つくらいの実力で圧勝した夢は、それからずっと啓太のいる繭に抱きついている。
ケイロンがいくら呼びかけても、まるで反応を見せず、ずっと繭にしがみついているだけ。
その姿はまるで卵を温める親鳥のようだ。
でもいつまでもそれを許しているわけには行かない。
今、この町は善悪入り乱れた戦場と化しているのだ。
いつまた啓太を危険にさらすとも限らない。
ケイロンはボロボロの身体に鞭打ち、夢に啓太を安全なところに連れて行くよう、再度頼もうとしたその時だった。

ピリッ・・・!

突然啓太の眠る繭が裂け、中から半透明の液体があふれ出したのだ。

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