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世界の中心で平和を叫ぶ。第2部
官能リレー小説 - SF

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世界の中心で平和を叫ぶ。第2部 289


ゴ、アアァッ!

「「!?」」

突然火の玉が空中ではじけた。
まるで目に見えない何かにぶつかったかのように。
何事もなかったかのように夢が応急処置にいそしむ中、レックスとケイロンははじけた火の玉が消えていく空中で妙なものを発見した。
それは空中に浮かぶ白い布。
どうやらあれがレックス自慢の火の玉を防いだらしい。
冗談にしてもあまりにタチの悪い話に、レックスとケイロンはしばし呆然とそれを見つめていた。
だがすぐ再起動したレックスは、自慢の火の玉をあっさりと防がれたことに逆上した。

「ふっ・・・ふざけるなっ!?
 ぼ、ボク自慢の火球がそんな簡単に防がれてたまるかぁっ!?」

レックスはそう言うなり、今度は右手の口から大量の火の玉を放出した。
だが夢はうっとうしそうにちょっとだけ視線を向けるだけで、よけるそぶりすらしなかった、
その代わり、空中から再びあの白い布切れが何枚も姿を現し、レックスの放った火の玉の群れをことごとく防いでいった。

「そ、そんな・・・っ!?」
「こ、これは・・・!?」

怒りに捕われたレックスは気づかなかったが、そんなレックスのおかげで、ケイロンはあの白い布が一体どこから来たのか、その正体を知ることができた。
あの空中に現れた白い布の正体は、夢の『糸』によって作られたものだ。
本来は1本しか放てないはずの糸を気づきにくいほどの細さで相当数放射し、それを編みこんで布の盾を作っているのである。
しかしろくに確認もしないで、布なんて幾重にも糸を送り込んだ代物を一瞬で形成してしまうとは・・・。
恐るべき技術だ。しかも夢の怪人化した腕でも防げなかった攻撃を。
火の雨が降りしきる中、夢はレックスなどほとんど無視して啓太の傷の診察を続けている。

「こっ、このっ・・・!?こんなモン、すぐにでも燃やして・・・っ!」

無視という、生まれて初めて味わう屈辱に顔を赤くしたレックスは、意地になってひたすら火の玉を吐き出し続ける。
しかしそれが夢に届くことはない。
みな虚空から現れた白い布に止められてしまう。

(これは・・・マズいな)

激しい猛攻の中、夢は啓太の状態に眉をひそめた。
背中にまで達している傷もだが、それ以上に出血がひどい。
すぐにここで本格的な治療をしなければ、死は免れないだろう。

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