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世界の中心で平和を叫ぶ。第2部
官能リレー小説 - SF

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世界の中心で平和を叫ぶ。第2部 288


――――

「―――ッ!?」

最初に夢の変化に気づいたのは当然、5体満足のレックスだった。
だがレックスがその場から飛びのいたのは、決して夢の髪が入れ替わるように白銀に変色したからではない。
戦いに明け暮れた経験から来るカン、みたいなものだろうか?
レックスの本能が急いで夢から離れろと訴えてきたのだ。
いったい何がレックスの危険警報にひっかかったのか?
それは本人にもわからない。
だが今目の前にいる女は、今までの人物と別人かと思うくらいに違う雰囲気をまとっていた。
そんな中、夢はゆらりと顔を上げるとキョロキョロと辺りを見回す。
彼女の瞳に敵であるレックス、味方であるはずの啓太とケイロンが映る。
だが瀕死の啓太や仇のレックスを見ても、夢はすぐに動こうとしない。
むしろガラス越しに実験動物を見るような、無表情な目つきで彼らを見ている。

「げほッ!?げっ、がはッ!」
「啓太様っ!?だ、大丈夫ですかっ!?しっかりしてくださいっ!」

そんな時、緊張に耐え切れなくなったのか、啓太が血反吐を吐いた。
それを見たケイロンはすぐに我に返り、夢に啓太の救出をお願いする。

「夢様っ!お願いですっ!早く啓太様に治療を!
 このままでは啓太様が死んでしまいますっ!夢様っ!」
「・・・・・・ユメ、サマ・・・?ケイタ、サマ・・・?」

ケイロンの必死の呼びかけに、夢がようやく反応した。
しかしそれはレックスが最初に感じたとおり、まるで別人を相手にしたような反応だった。
今の夢にはここにいる人間が誰かなんてわからない。
だが『ケイタサマ』という言葉は妙に心に引っかかった。

「ゆ・・・め・・・」
「っ!」

かすかに、しかし脳に直接響いてくるような声に、夢は驚いたように発生源の啓太に目を向ける。
啓太は別に今の夢を見、心配になって声をかけたわけではない。
啓太が心配しているのはレックスにやられ、弱っていた数分前の夢だ。
大量の出血で意識が朦朧とした彼には、もはや今の変化した夢に気づくことさえできなかったのだ。
だが幸いにもそれが今の夢を動かすきっかけとなった。

(この男は・・・誰だ?
 どう見ても『あの人』じゃないのに、なんでこうも心が揺れる?
 ああ、とにかく止血だ。早く応急手当をしなくては―――!)

そう思った夢がおもむろに啓太に手を伸ばそうとしたそのときだ。
横から巨大な火の玉が、夢に向かって突っ込んでくるではないか!?
その発生元をたどると、そこには恐竜の首を右手に移動させたレックスがいた。
どうやら突然の変化に脅威を感じ、不意打ちで倒す算段のようだ。
連接剣も持っていない今、夢に火の玉を防ぐ手段はない。
これまでか――――?そう思われたその時。

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