PiPi's World 投稿小説

世界の中心で平和を叫ぶ。第2部
官能リレー小説 - SF

の最初へ
 285
 287
の最後へ

世界の中心で平和を叫ぶ。第2部 287

一度目ですでに限界だった啓太の身体は、レックスの爪を引き抜かれると同時に自身の血の海に沈み。
それきり啓太が起き上がることはなかった。

「まったく・・・ザコのくせに何考えているんだか。
 ねえ?キミもそう思わない?」

レックスがため息混じりに夢に語りかける。
しかし夢は答えない。今の彼女は、あまりのショックから今ある光景、世界とは違うところにいたのだから。

「あ・・・!あ・・・!ああっ・・・!?」

彼女の目に、いろんな映像が次々と浮かんでは消えていく。
それは自分には身に覚えのない記憶ばかり。
ガラス越しに見える科学者らしき男。
次々と浮かぶ映像から、彼は自分に愛情の限りを尽くしているように見えた。

(誰だ?この男は一体誰だ?なぜ私の記憶にこんな男が存在する?
 なぜこの男は私にこんなにも優しくする?)

自分には啓太しか主人はいないはずだ。
なのに次々浮かんでくる映像には明らかに啓太ではない男が映っている。

―――ホントウニ、覚エテイナイノ?――――

(!?)

突然響いてきた声・・・いや『音』に夢が驚いて振り返ると。
そこには悲しそうな表情でこちらを見つめる、もう1人の夢が、いた。
何を言っている、とは思わなかった。なぜなら彼女は自分自身なのだから。
だが頭ではわかっていても、心がそれを拒絶する。
啓太と出会ってからの自分と、それ以前の部分がせめぎ合い、軋みをあげる。

(やめろ―――やめろ、やめろ、ヤメロッ!
 私ニ、こンなものヲ見せルナっ!?)

だが映像は止まるどころか、さらに加速して映し出されていく。
突然の襲撃。男をかばう自分。そんな自分に振り下ろされる凶刃。
だがその刃は自分ではなく、自分を突き飛ばした愚かな男に吸い込まれる。
慟哭。悲鳴。映像に音声はついてなかったが、そんなものなくても痛いくらいに伝わってくる。
あふれ出した感情は止まることなき奔流に姿を変えて、それを拒絶する夢の心を飲み込んだ。
そして世界が砕け、真っ白な光に包まれた―――。

SNSでこの小説を紹介

SFの他のリレー小説

こちらから小説を探す