世界の中心で平和を叫ぶ。第2部 284
ゴウッ・・・!
巻き上がる煙の中から、啓太とケイロンが飛び出す。
盾は少々焦げているが、何とか火の玉を防ぐことができたようだ。
真正面からの直撃でなかったのが功を奏したらしい。
その後も2〜3回火の玉を防いだが、どれも直撃を避けていただけに、受けたダメージは防いだときの衝撃や熱気くらいで、深刻なケガを負うことはなかった。
「へえ・・・?」
感情任せの乱射とは言え、自慢の火の玉を何度も防がれたレックスはいつしか怒りも忘れて、目の前の2人に感嘆の声を上げた。
それを見た夢の顔から血の気が引いた。
レックスの興味が自分から啓太に移ってしまったとわかったからだ。
せめてレックスをこの場に縫いとめたいところだが、疲労困憊、ダメージも残っている夢にはレックスを止めることもできない。
そしてレックスは新たな獲物を狩るべく、すぐそばまで迫ってきた啓太たちに向かって突っ込んでいった。
さすがのケイロンも、このスピードでレックスをよけて進むことはできない。
ここが2人の正念場であった。
「リベリオン様っ!」
「かまわねえっ!このまま突っ込め!
オレの盾なら、アイツの攻撃は十分防げる!」
「け・・・!」
啓太様!夢がそういうより早く、啓太とレックスが交差した。
ガキィンッ!
硬いもの同士がぶつかり合う音。
その直後、啓太とケイロンが体勢を崩し、地面を滑るように倒れた。
「いでっ!?」
「啓太様っ!?」
予想通りの結果に、夢はつい本名で主人の名前を呼んでしまう。
そしてなけなしの体力を振り絞って、自分のほうに吹っ飛んできた啓太の介抱に向かう。
しかし啓太は砂まみれになったくらいで特に外傷はない。
レックスの攻撃を食らったのは・・・。
「ぐっ・・・ううぅっ!!うああぁぁぁッ!?」
啓太を背負って走っていた、ケイロンのほうであった。
あの時、レックスは啓太を狙うと見せかけ、防御の薄いケイロンの左前足を斬り飛ばしたのだ。
戦略的にはオーソドックスなものだが、そのやり方は実に危険極まりない。
下手をすれば足を切るどころか、蹴られたり踏まれたりして死んでしまう恐れだってあったのだ。
それを一瞬の躊躇もなく実行し、成功させてしまうとは・・・。
恐ろしいまでの胆力と技術、そして勝利への執念である。