世界の中心で平和を叫ぶ。第2部 281
勝利を確信して油断したレックスに、最後にして最大の攻撃を仕掛ける準備をしていて答えられなかったのだ。
このときのために細心の注意を払って仕掛けた、夢渾身の攻撃。
これで夢の勝利が確定する―――はずだった。
「・・・な―――ッ!?」
しかし死角から確実に急所を射抜くはずの攻撃は、むなしく虚空を飛んでいった。
自分にとどめをさそうとしていたレックスは、夢の最後の攻撃を読んで、すんでのところで急停止していたのだ!
「―――そう来ると思っていたよ。特にお姉さんみたいなタイプはね!」
そして攻撃が終わったことを確認すると同時に、再びレックスは駆け出した。
追い詰められてなお、自分を倒そうとする戦士の命を奪うために。
反撃にも失敗し、もはや死ぬしか道のない夢は申し訳なさそうな、悲しそうな表情を浮かべて迫り来るレックスを見つめていた。
(反撃は失敗、防御は不可、回避も間に合わない。
・・・打つ手なし、か。これまでだな。
啓太様からあれほど勝手に死ぬなと言いつかっていたのに、まさか私が最初にその命令を破ることになるとはな。
申し訳ありません、啓太様。命令を遂行できなくて)
啓太の1番の従者を自認していた自分が、主人の命令を破って死んでしまうとは。
死をまえにしたせいか、そう思うとなぜか不思議と笑みがこぼれた。
気がかりなのは自分の死後、啓太が幸せに生きてくれるかどうかだが、たぶん大丈夫だろう。
アパレント・アトムにはクロックという優秀な怪人がいるし、鈴と空のように啓太の心の支えとなる怪人もたくさんいる。
(啓太様。私はここまでのようです。どうか私がいなくても健やかに過ごされますように―――)
そして夢の首めがけてレックスが右手の凶悪な牙を振り下ろされた。
死を覚悟する夢。
そんな彼女を救ったのは、2人に割り込むように上から降ってきた1枚の盾であった。
突然の乱入に、レックスの右手は夢ではなく盾に噛み付き。
夢は何とかその命をつなぎとめることができた。
「だ、誰だっ!?1対1の決闘を邪魔するヤツはっ!?」
よほど盾が硬いのか、レックスは右手の口で盾をくわえたまま、無粋な邪魔者を探そうとキョロキョロと頭を振って探す。
一方の夢は飛んできたものを見て、自分を救ったのが誰だったのか、直感で理解した。