世界の中心で平和を叫ぶ。第2部 278
すべてのケースを考えた上で、最良の選択をしただけだった。
準備万端で待ち続ける刀に、プテラはようやくその重い口を開いた。
「・・・迎撃の準備は終わったか?」
「いつでもどうぞ」
「よかろう。それではこちらも全力で行かせてもらう」
バッ!
その瞬間、プテラのマントが風もないのに舞い上がった。
いや、それはマントではない。
舞い上がったように見えたのは、広げられた翼だったのだ。
しかもよく見れば、プテラの左肩にはあるべきはずの腕の代わりに、短い筒のようなものが取り付けられている。
プテラはそのまま身体を刀に対して垂直に向け、初めて構えを取る。
その姿は、まるで弓矢を放たんとするかのようだ。
しかしこれはまだ序の口だ。
なぜならプテラはまだ攻撃の準備をしたに過ぎないのだから。
キ・・・キイイィィィ・・・・・・ッ!!
すると後ろに向けられた左肩の筒が、甲高い音を立てながら淡い光を放ち出す。
それが何なのか、刀がわかった瞬間、プテラは左肩のジェットを噴出させて突進していた。
ジャキィン!
それに対し、刀は反射的に抜刀。
エレメント・コアの力を帯びた刃がプテラの槍と交差した。
ズギャギャギャギャギャ・・・ッ!
地面を削りながらその動きを止めたプテラ。
刀の一撃が効いたのだろうか・・・?
「くっ・・・ああっ!?」
しかし先に地面へ片ひざついたのはカウンターを仕掛けたはずの刀であった。
その右の二の腕はえぐられたような傷跡ともに、大量の鮮血が流れ出している。
しかし刀からしてみれば、よく軽傷で済んだと言わざるを得ない結果なのだ。
あの時抜刀して突進の向きをわずかにでも変えなければ、間違いなく彼女は死んでいたのだから。
プテラと交差する直前、彼女が仕掛けた技の名前は『灯剣(ひけん)』。
光のコアを力を付与する、彼女の居合い抜きの中で最も早い抜刀術だ。
それは闇夜をきらめく光のように走り、敵を両断する技・・・のはずだった。
しかし。その神速の攻撃をもってしても、プテラの突進の軌道を変えるのが精一杯だった。
それほどまでにプテラの突進はパワー・スピードともにすさまじかったのだ。
いや、驚くべきはそこではない。