世界の中心で平和を叫ぶ。第2部 276
「ほらほら、どうしたの?まだゲームは始まったばかりだよ?
ほら、待っててあげるから早く起きて♪」
「・・・・・・ッ!」
その言葉に夢は顔を真っ赤にさせて跳ね起きた。
敵に情けをかけられたことに怒ったのではない。
自分を敵とすら見ていないその態度に激怒したのだ。
夢は今すぐにでもレックスを八つ裂きにしたい衝動をこらえながら、2本の連接剣をブンブンと振り回す。
連接剣は意思でもあるかのようにのたうち、飛び跳ねながら周囲の瓦礫を斬り削り、レックスを威嚇する。
「わお♪すごいすごい♪」
「・・・貴様。楽に死ねると思うなよ」
「大丈夫♪よくそう言われるけど、今まで負けたことなんて一度だってなかったから」
ゴウッ!
どこまでも無邪気に微笑むレックスに、夢は無言で武器を振るう。
その瞬間、連接剣が牙をむいた。
2本しかないはずの剣先は何本もの残像を見せながらレックスに迫る。
それに対しレックスは棒立ちの状態のまま変身を始める。
次の瞬間、恐竜の鎧をまとっていた姿から恐竜の背中に人間の上半身を取り付けたような姿に変化する。
「ふぁいや〜っ!」
ふざけたノリでレックスがそう叫ぶと。
下半身の恐竜が、迫り来る連接剣の嵐に向かってその口を開いた。
すると恐竜の口から巨大な火の玉が放出。
そのままドン、ドン、とバズーカ砲のような火の玉を計3発撃ち出した。
手数で攻めてくる敵には圧倒的な火力ということらしい。
事実、その選択は間違っていなかった。
連接剣の嵐が、火の玉に当たるより早く消滅していたからだ。
当然、その先にいるはずの夢も姿を消している。
巨大な火の玉を利用してレックスの頭上にジャンプしたのだ。
「甘いっ!
不意打ちのつもりで上に逃げたんだろうけど、空中じゃ逃げ場はない・・・よ?」
そこまで言って、レックスは初めて気がついた。
よけることも防ぐこともできない状態だというのに、夢が満足げな笑みを浮かべていることを。
(・・・待て。持ってた武器のうち、もう1本はどこ行った?)
そう思った次の瞬間、レックスの足元の地面が小さくはじけた。
出てきたのは夢の連接剣の先端。狙うはレックスのノド元!
今から変身しようにも間に合わない!
「どわっ!?」
あわててレックスは攻撃を回避。
しかし今度は上からもう1本の剣の先端が降ってきた。
下の攻撃をかわした時点で連続攻撃を狙っているとすでに見当のついていたレックスは、それを必死にかわし続ける。
その間に空中にいた夢は、地面に着地。
そのまま次の攻撃の準備を始めた。
「ちょっ!?こっちに攻撃させない気!?
いくらなんでも、そりゃズルくない!?」
「安心しろ。貴様を楽に殺すつもりはない」
「どの道ボクを殺す気のくせにっ!!大人ってずっこい!」