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世界の中心で平和を叫ぶ。第2部
官能リレー小説 - SF

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世界の中心で平和を叫ぶ。第2部 262


そう、あのミラージュの幻の中にはいつ入れ替わったのか、オート・バルキリーが入っていたのだ。
種明かしはこうだ。デッドフェイクを見失って探していたそのとき、偶然ミラージュはバルキリーと合流できたのである。
その偶然にミラージュの脳裏にある名案が浮かんだ。
1人ではこの状況を覆すことは難しい。
ならば彼女の手を借りて、あの小賢しい怪人を倒してしまおう、と。
ミラージュはバルキリーの身体に自分の幻をスーツのように着させて、おとり役を頼んだ。
その間に自分はデッドフェイクのように幻で自分を死体に擬態させて、反撃のチャンスをうかがっていたという次第である。
ではなぜデッドフェイクは、ミラージュの幻の炎でああも見事な火傷をしてしまったのだろうか?
それはミラージュがデッドフェイクの脳に直接幻を見せたからである。
幻というのは相手の五感を利用して脳に伝えられる情報を誤認させるものだ。
それゆえその間違いに気づけば、幻は霞のごとく消えてしまう。
しかしその情報を間違っていないと伝え続ければどうなるだろう?
その誤った情報を本物と勘違いして、本物と同じ反応を示す。
ある実験では目隠しした被験者に、ハンマーで足を軽くノックしていたら骨が折れてしまったという話や焼けた鉄の音を聞かせた後で冷たい鉄の棒を押し付けたら火傷した、などという事例も報告されている。
今回の場合は誰もが恐れるものの1つ、炎が全身を包むイメージを脳に強烈に送り込んだのだ。
火=熱い=触ると火傷すると連想したデッドフェイクは、幻の炎を本物と思い込み、あのような火傷を負ってしまったというわけだ。
ちなみにこの技、いくら強烈な幻を見せても、かけられる側がダメージをイメージできなければ何の効果もない。
例えば炎が熱い、危ないと知らない赤ん坊にこの技をかけても、何の効果も出ないのである。

「それでそちらのほうは片付きましたか?」

ミラージュの問いにバルキリーは笑顔で答えると、コードの伸びた右手を上げて、くいっと何かを引っ張るような動作をした。
すると近くの障害物からあのヤドカリ怪人が細いひも状の何かで縛られた状態で姿を現す。

「戦いの最中で中身が入れ替わっているとは思わなかったのでしょう。
 簡単に倒せましたよ」
「それは上々。ではそろそろこちらも反撃開始と行きましょう」
「そうですね。
 啓・・・リベリオン様の望む平穏を乱す連中にキツいお仕置きをすえてあげないと・・・!」
「・・・バルキリー?わかっていると思いますが、くれぐれも相手を殺さないでくださいね?」
「大丈夫!今度はちゃんと手加減しますっ!」

ミラージュは自分の言ったことの意味を理解しているのか、不安のため息をつかずにはいられなかった。

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