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世界の中心で平和を叫ぶ。第2部
官能リレー小説 - SF

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世界の中心で平和を叫ぶ。第2部 254


それを最後に、ルシフェルの声は聞こえなくなった。
どうやら先ほどのクロスファイヤーは、救われたお礼とやられた意趣返しのつもりだったらしい。
しかし正義の味方のくせに逃げ出すだけでも変なのに、わざわざ捨てセリフまで残していくとは。
まったくどこまでも変わったヒーローがいたものだと薙は苦笑を隠せなかった。
だが。あの少女こそ逃がしたものの、啓太への貢物はまだ残っている。
薙は最後の詰めに入るべく思考を切り替えると、いまだ悶え苦しむニクスに大刀を突きつけた。

「・・・っ!!」
「申し訳ないが、あなたまで逃げられては困るのでな。
 弱っているところ申し訳ないが、これも時の運とあきらめてもらうでござるよ?」

できれば正々堂々真正面から戦って決着をつけたかったが、今はそんな場合ではない。
薙は自分を殺して怪人の使命を全うすることを選んだ。
だがそんな矜持などニクスには知ったことではない。
そんな納得できるような性格なら、元々ザウルスペクターになど属していない。
ニクスは歯を食いしばって激痛に耐えつつ、反撃のチャンスを待った。
ニクスの最大の武器はスピードだ。
もし一瞬でも注意がそれようものなら、この至近距離でシャイニング・スライサーを叩き込んでやる。
手負いの獣と化したニクスは、虎視眈々とその機会を待った。
そのチャンスは意外にも早く来た。
おそらく石でも落ちたのだろう、薙たちのそばで瓦礫からカラカラと物音が聞こえてきたのだ。
敵ではないとわかっていても、薙のアンテナがわずかな変化に反応してしまう。
目線がニクスから外れ、注意がそれた。その一瞬をニクスは逃さなかった。

(―――今だ!)

薙の死角を狙って、右足で踏み込んで右手を振るう。
本来はある程度の距離があったほうが威力はあるのだが、この一歩だけでもかなりの威力を出せる。
踏み込んだ足から太もも、腰と力を駆け上がらせて右手に伝える。
そこから放たれた一撃は薙の死角、刀のない側から高速で襲いかかる。
薙も一瞬遅れで反応するが、すでにニクスの爪は刀の間合いより中にある。
勝った。ニクスは勝利を確信した。
ニクスの爪に肉の食い込む感触が伝わり、そこから血が噴き出る。
そして不意をつかれた薙は力なくその場に倒れ付す・・・はずだった。

「―――!?」

だが現実はそんなニクスの思い通りにはならなかった。
ニクスの放った爪は、薙の防いだ左の掌を貫いたところで止められていたのである。
引き抜こうにも押し抜こうにも、爪をそこから動かせない。
薙が筋肉を締めて爪を固定しているのである。

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