PiPi's World 投稿小説

世界の中心で平和を叫ぶ。第2部
官能リレー小説 - SF

の最初へ
 247
 249
の最後へ

世界の中心で平和を叫ぶ。第2部 249

腸が煮えくり返る思いか、ニクスは殺気を込めた鋭い視線をルシフェルに飛ばす。
「確かにおまえは速い。受け流すタイミングを見誤れば私とて反応しきれなかっただろう。だが、ただそれだけだ。速さを追求するために防御をおろそかにし、頑丈さも零に等しい。だから……」
再び、爪を振り下ろすニクス。だが、ルシフェルもカラミティブレードで先ほどと同様に受け流し……
「脆い。こう密着していては自慢の速さも発揮できない。攻撃も軽すぎる。体勢も楽に崩せる」
足払いをかけて、ニクスの体勢を崩して転ばせる。
だが、体勢を崩され、転ばされたニクスも苦し紛れの反撃をする。
蹴りを突き出し、僅かにルシフェルの頬に一筋の赤い線を刻み、黒い帽子が飛ばされ、長い金髪の一房が舞い落ちる。
「薄皮一枚を切られたか……帽子、気に入っていたんだがな」
彼女の青い瞳がむっとしたように細められ、見下していたという感情から少々怒りが滲む。
怯んだ隙にニクスは素早く下がり、距離をとる。ニクスばかりに意識を向いていたルシフェルは薙の事をおろそかにしていた。
彼女がその隙を見逃すはずも無く、二人を大剣による瓦礫の散弾攻撃が襲う。当然の如く、ニクスは素早さを活かして避ける。
「ちぃ、随分と味な真似を!!」
一方のルシフェルは手に持っているカラミティブレードの熱が増す。
元々、カラミティブレードも彼女の一部と言えば一部だ。カラミティブレードの正体は彼女の体内に流れるナノマシン。
そのナノマシンの残骸が物質化することで武器になっているのだ。普通、ナノマシンの残骸といえば、エネルギーを帯びる事無い、役目終えた廃棄物と思われるだろう。
だが、増えすぎたナノマシンもその残骸に含まれるのだ。残骸だからと言ってエネルギーを帯びていないとは限らない。
それゆえに、残骸がエネルギーを発し、大気との摩擦で発火、高熱化する事で怪人を瓦礫ごと易々と両断する破壊力を発揮している。
そもそも、彼女はニクスほど速くもなく、薙ほどの怪力も持たない。体型によるリーチの不利、体力・力不足による不利。欠点を上げればキリがない。
それでも対等以上に渡り合えているのは判断力と洞察力が優れているからである。
リーダーとして洞察力と判断力は欠かせないものである。次世代試作ヒーロー、プロトアドヴァンストヒーローを率いる者となればなおさら。
何より、変身する事を封じられている彼女は体内に流れるナノマシンによる自己再生だけが頼りだ。
次々と飛来する瓦礫の散弾を致命傷になる危険弾だけを見抜いて斬り、爆発させる事で粉々して無力化する。
「漁夫の利を狙ったつもりだろうが、残念だったな。思惑通りにいかなくて」

SNSでこの小説を紹介

SFの他のリレー小説

こちらから小説を探す