世界の中心で平和を叫ぶ。第2部 236
そんな中、ナメクジ怪人を蹴り飛ばしたクロウが啓太のそばに戻ってきた。
「啓太様。このままでは埒が明きません。
私が敵を1ヵ所に集めますので、啓太様はケイロンとお仕留めください」
「え・・・?でもオレには攻撃能力なんて・・・」
「ご安心を。そこはこのケイロンがサポートいたします。
啓太様はケイロンの背に乗ってお待ちになっていてください」
クロウはそう言うと両手を漆黒の翼へと変身させた。
腰を落とし、両腕をだらりとたらしたその姿は、これから何かのアクションの予備動作であることは明白である。
そして次の瞬間、だらりと垂れ下がった2枚の翼が嵐となった。
拳銃の早撃ちの要領で翼を何回、何十回にもわたって振り抜かれたのである。
振り抜かれた両の翼から放たれるのは、鉄の十弾ならぬ漆黒の羽根。
放たれた黒い嵐はちょっとしたショットガンのような勢いで次々と怪人たちの身体を撃ち抜いていく。
突然の猛攻に驚いた怪人たちはとっさに近くの障害物に隠れて攻撃をやり過ごそうとする。
そこはクロウがあえて攻撃しなかった、クロウの正面―――!
その開いた空間に、啓太を乗せたケイロンが敵を一掃するべく颯爽と駆け出した。
わずかな距離を走る間にどんどんその加速度を増していくケイロン。
それにくっついている啓太は、振り落とされまいと必死で背後から抱きついている有様だ。
これでいいのか、悪の総帥。
だが少なくともケイロンにとって、この状況は都合がよかったらしい。
「啓・・・リベリオン様!私をリベリオン様の鎧で包んでください!
目の前のザコでも弾き飛ばします!」
「わわわ、わかったっ!」
ケイロンの言葉の意味を理解した啓太は、あわてふためきながら鎧を展開してケイロンの身体を包み込む。
彼女は啓太の鎧を武器兼自分の身体を守るクッションにして体当たりを食らわせるつもりなのだ。
集められた怪人たちも、ケイロンたちの狙いに気づいたようだがもう遅い。
逃げようにも攻撃方向の直線上にいる彼らに逃げ場はない。
飛んだり地面に潜ろうにも、時間もないし、密集しすぎて飛ぶこともできない。
そうこうしているうちに、1発の弾丸と化した啓太&ケイロンペアが突っ込んできた!
ドッ・・・カァンッ!!
ぶつかった瞬間、怪人たちの塊は大きくゆがみ、次の瞬間大きくはじけた。
ものすごいスピードと啓太の鎧によって、とてつもない破壊力を生み出したのである。
弾かれた怪人たちはビリヤードの玉のようにあちこちに飛んでいくと、瓦礫や地面に激突して次々と行動不能になっていく。
ちょっとした地獄絵図の中、展開した鎧を収納した啓太が不安そうにケイロンにたずねた。
「な、なぁケイロン。何かずいぶん派手にやっちゃったけど・・・コイツら死んでないよな?(大汗)」