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世界の中心で平和を叫ぶ。第2部
官能リレー小説 - SF

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世界の中心で平和を叫ぶ。第2部 228


「私は夜伽の管理人にして啓太様の忠実なる下僕。
 啓太様の嫌がることは、私の望むところではありません」
「・・・イブ。帰ってきたら、ちょっとオレと話をしようか」
「・・・?はい、かしこまりました」

名前と顔を覚えてもらえるほど親しい関係なのに、いまだにこんな固い態度で付き合ってくるイブに、啓太はもっと彼女を人間らしさというものを教えてやらなければ。
決して悪いコではないとわかっているだけに、啓太はイブのことをそう思わずにはいられなかった。

(―――そのためにも生きて帰らなきゃ、な)

スピーカーから流れる地上の情報を心にとどめておきながら、啓太は自分の望む未来のために血しぶき舞う戦場へと足を踏み出したのであった。
啓太たちが一歩外に踏み出すと。
そこは想像以上に悲惨な光景を呈していた。

「・・・っ」
「さすがにこれだけの規模の戦いとなると、ずいぶん激しいようですね、ケイロン」
「ああ・・・。我々も気を引き締めてかからねばな」

ケイロンとクロウがそうつぶやく先には、見渡す限りの廃墟が広がっていた。
そう、啓太たちの出てきた出入り口を隠すものは何もなかった。
しいて言うなら、あたりに転がった大小さまざまな瓦礫だけが、その秘密の出入り口を隠していた有様だった。
おそらくレストランだったのだろう、出入り口の近くには食器の破片やほこりにまみれた調理器具が瓦礫にまぎれてそこかしこに散らばっている。
足元から軽く目を上げてみれば、真ん中あたりでたたき折られた高層マンションの上の部分が目の前の道路に横たわっている。
その下には下敷きとなった車らしきものが数台。
運転席が見えないほどぐしゃぐしゃになっていたのはよかったと言うべきか、不幸と言うべきか。
かつて夢たちと一緒にレフトファンを潰しに言ったときよりもひどい光景が、啓太の目の前に広がっていた。
絶句する啓太に、気の利かないケイロンとクロウがよけいなことを口にする。
それに対し、イブは眉をひそめて2人の名前を呼んだ。

「・・・ケイロン、クロウ」
「何ですか、イブさ・・・あ」
「も、申し訳ありません。私どもとしたことが気も利かず・・・」

すぐにイブの言わんとすることを理解した2人は、あわてて啓太とイブに謝罪する。
だが啓太は自分の何よりも守りたかったものを壊されたショックが大きかったらしく、何かをこらえるように歯をかみ締め、拳を強く握り締めるばかりであった。

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