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世界の中心で平和を叫ぶ。第2部
官能リレー小説 - SF

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世界の中心で平和を叫ぶ。第2部 227

そんな中、唯一事情を飲み込めない啓太がきょろきょろしながら、何事かと問う。

「お、おいイブっ!?い、いったい何事だ、これは!?」
「・・・おそらく司令室からの放送でしょう。
 内容からして、雅あたりが私たちのために気を利かせてくれたのでしょう」
「雅が・・・?」

啓太はイブの推論に心が熱くなるのを感じた。
雅だって今、部下たちを相手にいろいろ大変なはずだ。
そんな忙しい中、さらにクロックの目をかいくぐって自分に情報を伝えようとしてくれるなんて・・・。
啓太は感謝の気持ちで、不覚にも涙が出そうになった。

『・・・ふむ。確かに啓太はおとなしくしているようだな』
『はい。どうやらエレメンタル・ガーディアンの現純な監視に脱走をあきらめたようです』

そこにタイミングよく聞こえてくるのは雅たちの声。
啓太にイブの推論が間違っていないことをアピールするために、こんな猿芝居を打っているのだろう。

『・・・よかった。啓太に何かあっては一大事だからな』
『はい。啓太様は我々の生きる希望ですからね。
 ここから逃げ出されてケガなどされないようにしてもらわなくては』
『しっかり見張っておけよ。あきらめたふりをしただけかもしれんし、いいかげんなことをしているとクロックがうるさい』
『おまかせください。啓太様の様子はちゃんと私が見張っています』
『まったくクロックのヤツめ、こんな恨まれ役の面倒な仕事を押し付けやがって。
 後でたっぷり報酬をふんだくってやる』
『そのときは私の分もお願いいたします、雅様』
「・・・っ、雅のヤツ・・・わざとらしい会話しやがって・・・」

啓太はスピーカーから聞こえてくる会話から、彼女らが自分のことを心配していること、地上に出る手伝いはちゃんとすること、戻ってきたらこの報酬をよこしてもらうことなどを言っていることがよくわかった。
ホントは危ない地上に送りたくないだろうに・・・。
それでも彼女は啓太の意志を組んで地上に送り出してくれているのだ。
存在意義から来る義務ではない、その優しさに啓太の心の中の雅の評価は上がりっぱなしであった。

「雅のヤツ、ずいぶんと粋なはからいをしてくれますね」
「ああ・・・。帰ったら手伝ってくれたヤツと一緒に、いろいろお礼をしなくっちゃな」
「かしこまりました。
 つきましてはパラサイトたちも平等に愛してくださるよう、お願いいたします」
「・・・?おまえはいいのか?」

てっきり自分のごほうびもねだってくるとばかり思っていた啓太は、意外そうな顔で聞いた。
するとイブは無表情のままでこう答えた。

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