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世界の中心で平和を叫ぶ。第2部
官能リレー小説 - SF

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世界の中心で平和を叫ぶ。第2部 212

しかし彼らはまだいいほうで、ひどいのは倒れることもできず、縛り上げられている連中だ。
刃つきの強靭な糸に縛られた連中は、全身血まみれで身体のところどころに刃のついた金属板を身体にめり込ませていた。
ちょっと見上げれば彼らのものと思われる血液が、糸を伝ってポタリポタリと雨のように滴っていた。

「ここまでする気はなかったんだがな・・・。
 予想以上の使いやすさで加減ができなかった」
「それ、なんて武器でしたっけ?」
「連接剣。名前はまだない。私のほうで勝手につけてくれと言われた。
 これは私にしか使えない武器らしいからな」
「え、それって夢様しか使えないんですか!?」
「ああ。この剣の糸は私の糸を組み込んで使っているからな」

夢はそう言いながら、この惨状を啓太にどう説明したらいいものか、大いに困っていた。
幸いどの怪人も息はあるようだが、間違いなく治療を必要とするレベルだ。
かと言って、自分の実力を高く買っている啓太の期待を裏切りましたなんてどの口が言えようか。
夢は啓太の所有物となってから、ある意味どんな苦境に立たされたときよりも大変な問題に頭を悩ませるのであった。

――――

一方その頃。鬼瓦率いる新部隊『オリハルコン・フォース』はようやく現場である三方町に到着した。
怪人犯罪のなかった町は、今やどこにもその面影はなく。
まさに戦火の飛び交う激戦の地と化していた。
ただの警官としてこの町でパトロールしたこともある鬼瓦としては、目の前の悲惨な光景に胸が締め付けられる思いであった。

「何ということだ・・・。あの平和な町がこんなことになってしまうとは・・・!」
「隊長。お気持ちはわかりますが、今は一刻も早く怪人たちを排除することを優先するべきかと」
「ちょ、翔影さんっ!?鬼瓦先輩にもいろいろあるんですよっ!?
 少しくらいその気持ちを汲んであげたって・・・!」

変わり果てた光景に思わずつぶやく鬼瓦に、翔影はすかさず冷静な意見を出す。
しかし人間とは感情の生き物である。
鬼瓦警部の気持ちがわかる真一は、あまりに冷たい翔影の発言に反論した。

「感傷に浸ったところで事態は好転などしませんよ。
 怪人たちを倒すほうがよほど有益です」
「だからって・・・!」
「・・・2人とも、やめてくれ。確かに感傷に浸っていた私が悪かったんだから」

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