世界の中心で平和を叫ぶ。第2部 211
しかしあれほどまでに正確で不規則な動きをしていた刃の列は一直線にあらぬ方向に飛んでいく。
だがこの攻撃はここからが本番だった。
ギャリィンッ!ギャリギャリギャリィンッ!
「「「ッ!?」」」
外れたはずの攻撃は瓦礫に跳ね返って襲いかかって来たのだ!
あわててよけるもすぐに瓦礫を使って再び襲いかかって来る。
しかも。
「い、いつの間に2本目を!?」
1本だけだった刃の蛇は、いつの間にか2本に増えて自分たちに襲いかかっていた。
そしてこのときになって初めて怪人たちは自分たちを苦しめてきた武器の正体を知った。
それは目を凝らさねば見えぬほどの細いワイヤー。
それが何枚もの刃物を引き連れて自分たちを攻撃していたのだ。
連続攻撃の嵐に舞った怪人たちの返り血で、初めてワイヤーがその姿を現したのだ。
しかし気づいたときにはもう遅い。
いつの間にか2本の刃の蛇は残された怪人を包囲し、その包囲網を一気に縮めていた。
ギュオォ・・・ッ!ザシュザシュザシュザシュザシュッ!!
「「「ギィアアァァッ!?」」」
わずかに遅れてワイヤーの結界に閉じ込められた哀れな獲物は、倒れることすら許されずに刃の蛇の餌食となった。
ガラッ・・・
敵の怪人が沈黙して数分。瓦礫の影からいくつもの人影が姿を現す。
それは夢とその配下の怪人たち数名であった。
「うわぁ〜・・・。これ、結構エグいですね〜・・・」
「あれだけの数の怪人を、たった1人で全滅させてしまうだなんて・・・。
さすがは夢様ですわね」
「私だけの実力ではない。開発部部長マジカルバニーからもらった、この武器のおかげだ」
夢はそう言いながら、それぞれの手におさめられた刃のない剣の柄のうちの1本をみせてやる。
本来刃のある部分には細い糸が伸びており、それはあたり一面に張り巡らされた糸につなげられている。
「それでも十分すごすぎますって、これ。
私も今度開発部に武器作ってもらおうかな〜」
配下たちは目の前の光景を見ながら、武器とその使い手に素直に敬意を表した。
地面や瓦礫には怪人たちの血が飛び散り、いたるところに行動不能となった怪人たちがうめき声を上げている。