世界の中心で平和を叫ぶ。第2部 195
不可解な感情にやきもきする啓太の様子に、雅はクスクス笑いながら、子供に言い聞かす母親のような口調で啓太に尋ねた。
「・・・なぁ啓太。私たち怪人がおまえを求めるのは何でだと思う?」
「・・・え?そ、そりゃあおまえたちがオレの役に立とうとしているからじゃないのか?」
「じゃあ何で私たちはおまえに怒られるとわかっていて、ああもおまえに迫って来るんだと思う?
おまえの役に立とうとするなら、おまえの不愉快なことをする理由がないよな?」
「え?えっと・・・そ、そりゃあそれしかできることがないから・・・」
ピシャッ!
そう答えた瞬間、雅は啓太の両頬をたたくように挟み込んだ。
「0点。組織を立ち上げたばかりならともかく、非戦闘員でも働ける今の環境で、そんなことあるわけないだろ。
どこまで鈍感なんだ、バカ」
「ば、バカ?」
雅の言葉に啓太は面食らった。
まさか啓太を常に立てようとする怪人から悪口を言われるなんて思ってもみなかったのだ。
次々と繰り出される怪人らしからぬ行動に啓太は完全に飲まれていた。
「まったく。私たちに人間のことを勉強しろと言いながら、おまえは私たちのことを勉強してないようだな」
「一般常識も持ち合わせていないヤツに言われたくない」
「じゃあ博識な人間様の啓太にもわかりやすく言ってやる。
私たちがおまえに迫っているのは、義務でもなければ仕事だからでもない!
純粋におまえに好意を持っているからだ!
みんな、おまえのことをアイしてるんだよっ!」
「あ、愛!?」
それはまったくの予想外。
怪人の口から『愛』なんて言葉を聞くとは思わなかった啓太は思わずマヌケな声を上げてしまった。
その様子をある程度予測していた雅は思わず嘆息する。
鈍感な主人であるとはうすうす気づいていたが・・・。
「おまえな、怪人の私が言うのもなんだが、もう少し女心とか言うのを勉強しろ。
人間とまるで違う価値観を持つ怪人に言われるなんて相当なことだぞ?」
「ううっ・・・」
痛いところをつかれ、さすがの啓太も反論できない。
しかし夢と出会うまで友達もおらず、女と縁のない生活を送っていた啓太に他人の心の機微なんてわかろうはずもなかったのだから。
雅は怪人に正論突きつけられてへこむ啓太にもわかるよう、親切丁寧、わかりやすく説明してやることにした。
「いいか、啓太?確かに私たち怪人は使い捨ての道具として作られた。
でもな、だからと言って、感情や好き嫌いがあるわけじゃないんだぞ?
仲間を助けるためにレフトファンから脱走した鈴や空がいい例だろう?」
そう言われて啓太は思い出す。
愛玩用の家畜として作られ、自分の意思とは無関係に犯されたり子供を産まされたりする毎日。