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世界の中心で平和を叫ぶ。第2部
官能リレー小説 - SF

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世界の中心で平和を叫ぶ。第2部 194


啓太がまだ痛みの残る腹を気にしながら、目の前の雅に文句を言う。
目覚めた啓太がいるのはベッドの上。正確には雅の膝枕の上だ。
まわりには人の気配がする。鈴と空が近くで夢たちを介抱でもしているのだろう。

「あれくらいしないとおまえは止められんからな。
 命令権を行使されて夢たちのようになるのはゴメンだ」

雅は申し訳なさそうに苦笑しながら啓太の髪を梳(す)いた。

「断っておくが、また命令しようなんて思わないでくれよ?
 もしそのそぶりを感じたら、またすぐ意識を刈り取る」
「・・・わかってるよっ」

雅の忠告に啓太はすねたように答えた。
自分の持つ怪人への命令権は発動させれば無敵なのであって、そうでなければ意味はない。
啓太はさっきの一撃でそのことを痛いほどに理解していた。
さすがの怪人たちの主人も、これにはおとなしくせざるを得なかった。

「物わかりがよくて何よりだ。
 それでお説教ついでにお願いがあるんだが、聞いてもらえるか?」
「・・・わかってるよ。アイツらを元に戻せってんだろ?
 後で責任もってやっておくよ」
「よろしい。それでは今後の互いのため、話し合いをするとしようか」
「・・・『話し合い』ぃ?」

啓太は雅の言葉に耳を疑った。
今まで啓太は怪人たちに常識を教えるべく話し合い(怒りに任せた説教)をしたことはあるが、雅たち怪人がそれを持ち出してくるとは思わなかったのだ。
啓太の様子にも雅は微笑みを崩すことなく、啓太の髪を梳く。まるで啓太の反応が予想通りだと言わんばかりに。

「どうした?我々から話し合いを持ちかけてきたのが、そんなに意外だったか?」
「・・・正直驚いた。おまえら、いつもオレの言うこと聞いてて、反論することがなかなかねーから・・・」
「啓太が日頃から我々に人間らしくさせようとしているおかげさ。
 啓太にとってはうれしいことなんじゃないのか?」
「ん・・・まぁ、そう・・・なんだけど」

雅の言葉に啓太はなんとなく口ごもる。
確かに啓太は怪人たちを人間社会で生きられるように努力してきた。
だが何かすっきりしない。喜ばしいことのはずなのに。

「理解はできても納得はできないって顔だな」
「・・・ああ」

雅の答えに、啓太は素直にそう答えた。
啓太にもわからないこの謎の感情。啓太は怪人たちとの生活で心境に何らかの変化が起こったのだろうか?

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