世界の中心で平和を叫ぶ。第2部 193
一方2度も主人をたたいた雅も、ちょっとだけ驚いたようで、2発目の平手打ちについてのみ謝罪する。
言いたいことはわからないでもないが、そのあまりにあっさりとした言い方に啓太はすぐに反論することができず、呆然とすることしかできなかった。
以前の啓太なら、ここで相手が喝を入れるまで動くことはできなかっただろう。
しかし千羽との稽古とレゼントとの戦いで一皮向けた啓太は、すぐに再起動して雅に怒鳴りつけた。
「・・・っ痛ぇな、いきなり何すんだよッ!?」
「夢たちが何をやらかしたのか知らないが、やりすぎだ。
そろそろ許してやれ」
雅は啓太の怒りなど涼しい顔で受け流しながら、淡々と用件を告げる。
「何でオレがアイツらをだしてやらなきゃなんねーんだよ!?
人をオナペットか何かと勘違いしているヤツらにはちょうどいいだろッ!?」
「・・・本気で言ってるのか?怪人である私たちが、おまえを性欲処理のおもちゃごときと一緒にしているわけがないだろう?」
「う、うるさいっ!」
「まったく・・・しばらく見ないうちにずいぶんとクロックに毒されているな。
自分が今、何をやってるのかわかっているのか?
あーだこーだとわがままを言い、自分の意見が通らなければ命令させてでも通らせる。
今のおまえはそこらへんのガキ大将や不良どもと大差ないぞ?」
「―――っ、うるさいッ!『だ・・・ッ!」
キィンッ!
啓太が我慢できず、とっさに命令権を行使しようとした瞬間、甲高い音がして啓太の声がかき消された。
啓太があっけに取られた瞬間、雅はすかさず間合いをつめて強烈なボディーブローをお見舞いする。
「・・・ガッ!?」
「悪いが少し眠ってもらおう。夢たちを自由にさせるのを邪魔されてはかなわんからな。
起きたらじっくり話し合おう。おまえを愛するものとして、今の啓太を放ってはおけないからな・・・」
雅は苦笑しながらそう言うのを聞きながら、啓太は意識を闇の底へと沈めていった・・・。
それから啓太は二時間程、意識を失っていた。
「・・・・・うっうん、ここはどこだ。」
目を覚ました啓太は辺りを見回す。
「お前の部屋だ啓太どうやらお目ざめだな。」
「雅、いきなり何をするんだ。」