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世界の中心で平和を叫ぶ。第2部
官能リレー小説 - SF

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世界の中心で平和を叫ぶ。第2部 185

啓太たちが夢の派遣した戦闘員部隊と出会ったのは半分シャーマンが関与している。
彼女が彼らと早く出会えるように最短ルートを選択して移動していたのだ。
彼女の最大の武器である目。実はこれ、目を合わせた相手を無差別に倒す殺傷兵器などではない。
本来は千里眼や未来予知などありとあらゆるものを見透かすためのものなのだ。
しかしさまざまな能力が付加された結果、力の加減が難しく、封印を施さなければ無差別に見たものを攻撃する殺傷兵器となってしまった。
危険すぎるため、封印指定怪人『エウレカシリーズ』となっていたところを、クロックに助けられ、開発部の努力により、日の目を見ることとなったのである。
目隠し型の封印で日常生活が送れるようになった彼女は、自分の能力を『冥術』と名づけてその一部を使えるようになっている。
未来予知はその1つだ。ごく近い未来しか見ることのできない能力だが、彼女はそれを使って派遣部隊の位置を知ったのである。
ちなみにその存在を知ったのは、シャーマンがレゼントを倒すとき、偶然に目に映ったのである。
何も知らない啓太は、味方と知るや、連れて来られなかった人間たちを助けに行くように命じていた。
これで人数不足や薬不足で助けられなかった命も、だいぶ助けられることだろう。

「よかったですね、啓太様」
「・・・ああ」

だが啓太の顔は浮かない。こうしている今も散っている命のことを思っているのだろう。
啓太はまだ一般人としての感覚が抜け切っていないから、救えない命があると理解しても納得できていないのかもしれない。
それをなんとなく察知したシャーマンは、夢に代わって彼女の伝えたかった言葉を伝えた。

「啓太様。そんな顔をしないでください。
 少なくとも啓太様が1人でも多く救おうと努力したから、今の結果があるんですよ?」
「でも・・・オレは・・・」
「確かに啓太様は全員を助けられなかった。それは事実です。
 ですがそのショックからすぐ立ち直らなければ、もっと犠牲が増えていたのも事実です」

でも、と啓太が反論しようとしたところを、シャーマンは唇に人差し指を当てて黙らせた。
そしてその体勢のまま、言葉を続ける。

「いいですか、啓太様?現実はいつもあなたに優しいとは限りません。
 あなたを冷たく突き放すこともあるでしょう。
 その時、啓太様が自分の信念を貫くかどうかで結果は決まるのです。
 苦しさに耐え切れず、安易な道を選べば勝ちを拾えてもその犠牲は大きいもの。
 啓太様の場合は、考えるのを止めたりあきらめたりすればもっと犠牲が出るものとお思いください」
「・・・っ」

自分があきらめただけで人が死ぬ。
犠牲を出したくない啓太は冗談じゃないと強く思った。

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