PiPi's World 投稿小説

世界の中心で平和を叫ぶ。第2部
官能リレー小説 - SF

の最初へ
 181
 183
の最後へ

世界の中心で平和を叫ぶ。第2部 183

それから数分後。現場には粉々に砕かれた木とつぶれた無数の木の実がそこかしこに転がっていた。
人間を知らず餌食にしていた張本人はと言うと。
啓太の足元で手足のない状態で気を失っている。
豊かな胸がかすかに動いているところを見ると、まだ死んではいないようだ。
傷口からも血は一滴たりとも出ていない。
樹木化していたおかげで、気絶するだけですんだのかもしれない。
しかし彼女の養分となっていた、人間たちの何割かは救えなかった。
啓太はその事実に苦しみ、打ちのめされていた。
そして啓太は同時に悟る。夢とクロックは自分に教えたかったものの正体を。
今までは啓太が無茶を言っても、夢たちが何とかしてくれた。
しかしそれは結果論だ。これからもそれができるとは限らない。
時にはどうしても助けられない人、切り捨てることがあるかもしれない。
2人はそれを啓太に教えたかったのだ。
自分が今までいかに怪人たちに甘えていたか、そして自分の無力さに打ちのめされる啓太。
だが啓太はまだ気づいていない。終わったのはクロックの訓練。
夢の訓練はまだ現在進行形で続いているということを。
それは無力感に打ちひしがれる啓太へのささやかな救いであった。
「けっ啓太様………」
悲しみに打ちひしがれている啓太にシャーマンは声を掛けようとする。
「ああ…シャーマン、すまない。それじゃ、レゼントの回収、遺体の弔いとかを始めるか。」
自分を心配するシャーマンに気付いた啓太は彼女に心配かけない様に後処理に取り掛かる。
今まで仲間の怪人に頼りきっていた啓太にケガ人の治療なんて器用なマネができるわけがない。
必要な治療器具もほとんどなく、あまりの被害者の数の多さに啓太はすぐに悪戦苦闘する羽目になった。
シャーマンも手伝うが、後方支援向きの怪人ではない彼女のできることもたかが知れている。
だがそれでも啓太はあきらめない。
戦場の病院のような光景の中、怯えたり吐き気を覚えたりしてもその手を止めない。
啓太は1人でも多くの人間を助けようと、必死にがんばり続けた。

(啓太様・・・)

SNSでこの小説を紹介

SFの他のリレー小説

こちらから小説を探す