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世界の中心で平和を叫ぶ。第2部
官能リレー小説 - SF

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世界の中心で平和を叫ぶ。第2部 182


「い、いや・・・。こ、来ないでください・・・!」

レゼントは恐怖に顔を引きつらせるが、身体が地面にどっしりと根を下ろしていては逃げることができない。
だがここで勘違いしてはいけないのは、彼女が恐れているのは自分の命が失われることではない。
彼女が恐れているのは、自分の存在意義を全うできなくなることだ。
レゼントは他人に夢を与えるため、この世に生を受けた。
そして身体が動けなくなることを代償に、更なる力を得てたくさんの人たちに夢を与えてきた。
もし自分が今、ここで死んだら。
自分の夢の中で生きている人はいったいどうなる?
きっと絶望の現実の中で生きる地獄に逆戻りするに違いない。
なぜ目の前の人たちは、そんな簡単なことに気づかない?
レゼントは『お願いだから彼らを夢から起こさないで』と涙ながらに訴えたが、啓太の歩みが止まることはなかった。
そしてうつむいたままの啓太がレゼントの目の前に来る。
彼女は目の前にやってきた死神に涙し、最後の懇願を試みた。

「お願いです・・・見逃してください・・・。
 私が死んだら、みんな夢から目覚めてしまう・・・」
「・・・オレはよ。正直他人なんてどーでもいいんだ」

レゼントの懇願を無視し、半ば遮るように啓太はつぶやいた。

「最近物騒なことばかりだけど・・・オレに迷惑がかからないなら、戦争やろうが何しようがどうでもいい」
「・・・では・・・!?」
「でもよ・・・」

次の瞬間、啓太は顔を上げた。それは苦しみとも悲しみともつかない、顔。
許しを請うようでもあり、やりたくないことをやり決意をしぶしぶしたような、何とも判別のつきにくい表情だった。

「やっぱ、耐えられないんだ。オレの目の前で誰かが死ぬ、ってのは。
 それが見ず知らずの人で、どうしようもない運命だったとしても、助けられるのなら助けたい。
 だから・・・」

啓太は右手の剣を突きつける。それは彼女の願いを切り捨て、彼女によって支えられている命を見捨てる決意の表われ。

「だから・・・アンタの、頼みは・・・聞けない」

その瞬間、主人の意図を理解したシャーマンが、自らに施された封印を解き、その奥に隠された目の力を解放させた―――。

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