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世界の中心で平和を叫ぶ。第2部
官能リレー小説 - SF

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世界の中心で平和を叫ぶ。第2部 181

「・・・啓太様。残念ながらすべての人間を救うことはできません。
 あの木の実のカプセルを壊せば、すぐに死んでしまう人間が何人か混じっております」

声を荒げる啓太に、シャーマンはしばしの間をおいてから、決意の表情で事実を告げた。
それは怪人が万能でないこと、そしてこの世にはどうやっても思い通りにならないことがあるという、至極当然で啓太が半ば忘れつつあった世界の常識であった。

「・・・え・・・?」

シャーマンの答えに、啓太は思わずマヌケな声と表情を出してしまった。
たとえそれが人道的で正しいことでも、すべての願いがかなうことは決してない。
夢という怪人を手に入れてから、アパレント・アトムという理想郷に住んでいた啓太はすっかりそんな当たり前のことを忘れてしまっていたのだ。
啓太はシャーマンの言葉が信じられないとばかりに聞き返す。

「な・・・んで?アイツを倒せば、それで解決するんじゃないの?
 だって、夢やおまえたちは、今までオレのどんな無理難題も難なく・・・」
「残念ながら無理です。
 ここに卓越した治療技術を持つ医療部の連中や、驚異的な回復能力を持つスイーツ・ホルスタインのミルクを用いても、頭脳と骨だけになりつつある人間を全部蘇生させるなんて不可能です。 
 啓太様。お選びください。ここで死ぬ間際に人間を見捨てて大多数の人間を救うか。
 それとも死ぬ間際の彼らにつかの間の楽園を見せるため、助けられる人間を見捨てられるかを」
「・・・!」

その言葉に、啓太はシャーマンが本気で選択を迫っていることを理解した。
怪人は道具だ。それゆえに自分の持てるスペックをフルに使って持ち主の望みをかなえようとする。
だから、怪人が無理だと言えば、それは無理なのだ。
それは自分の力を使ってもどうすることもできないということなのだから。
シャーマンが突きつけた選択に啓太は迷う。
当然だ。どちらを選択しても、啓太は結局誰かを犠牲にしなくてはならない。
いくら怪人たちすべての面倒を見る気になったとは言え、犠牲者を出すという初めての選択に戸惑わずにはいられなかった。
だがここで動かねばもっと大きな犠牲が出る。
啓太は迷いに迷った挙句、シャーマンに命令を出すことをやめ、黙ってレゼントの元へ歩いていく。
右手の剣を引っ込ませないで歩いてくることに、レゼントは大いに動揺した。
彼が自分を殺すつもりだと思ったのだ。

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