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世界の中心で平和を叫ぶ。第2部
官能リレー小説 - SF

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世界の中心で平和を叫ぶ。第2部 180


「じゃあなんでアンタは人間を捕まえるんだよ!?
 人間を食うためじゃねえのかよっ!?」
「・・・あなたは何を言っているのですか?
 私は人間を捕まえたこともなければ、食べたこともありません。
 私はただ、ここにやってきた人たちのために夢を見せていただけです」
「ここに・・・やってきた・・・?」

啓太はその言葉に耳を疑った。この人たちは自分の意思でここにやってきた?
ヤツが人を殺していることは知らなくても、行方不明者が出ていたことはわかるはず。
なのになぜ、わざわざ死地に足を突っ込む必要がある?
理解に苦しむ啓太にレゼントは答えた。
それは過剰なまでの優しさが産んだ狂気と悲劇であった。

「私は人に夢を与えることを目的に作られました。
 ここにいる人たちはみな何かを求めてやってきたんです。
 尽きることのない欲望、取り戻せないものを取り戻すために。
 私はただ、そんな人たちのために夢という形でかなえ続けているだけです。
 あなたたちは、私に救いを求めてきたのではないのですか・・・?」

レゼントの言葉に啓太はめまいを感じた。
何だ。いったい何なのだ、この女は。現実をまるで受け入れようとしない。
人殺しは人助けのためだと言い、人間への殺傷をまるで受け入れようとはしない。
それどころか、自分が犠牲にしてきた人間は自分から歩いてやってきたと言う。
いったいどこの誰が、こんなさみしい山の中、殺されるためにやってくると言うのだろうか。
何より信じられないのは、彼女がそれを真実とまるで疑ってないことだ。
啓太はレゼントに心からの憐憫と同情を送りながら、彼女の質問に答えてやった。

「悪いがこっちはアンタの救いなんて求めていないよ、レゼント。
 オレたちがここにやってきたのは、人を食っていることにすら気づいていないアンタと。
 アンタの夢に捕らえられた人たちを救うために来たんだよ。
 さぁ、まずはアンタが今も食っているその人たちを解放してもらうよ・・・?」

まるで駄々をこねる子供を説き伏せるような優しい口調で、剣のように硬質化した右手を突きつける啓太。
それは何の攻撃手段を持たないとされる彼女への、明らかな宣戦布告であった。
だが。突きつけたその剣は、予想だにしない方向から押さえられた。
背後からシャーマンが啓太の手首に当たる剣の根元を押さえたのだ。
いったい何を?啓太は表情で如実に語りながらシャーマンを見る。
しかしシャーマンは悲しそうに、ただ黙って首を横に振るばかり。
彼女はいったいどうしたというのか?
一向に答えを言おうとしないことに業を煮やした啓太が声に出して問いただした。

「どういうことだよ、シャーマン!?
 何でアイツの犠牲になっている人たちを、助けちゃダメなんだよ!?」

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