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世界の中心で平和を叫ぶ。第2部
官能リレー小説 - SF

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世界の中心で平和を叫ぶ。第2部 176

モーゼの十戒のような光景。
そしてその割れた人垣の中央から、1人の見目麗しい女性が姿を現した。
ひざまである亜麻色の長い髪に、ゲームや小説に出てくるエルフのようなとがった耳。
人形かと見まごうほどに白い肌に金と銀で彩られたオッドアイ。
そしていったい何の材質でできているのかわからない、水色のスケスケ薄布を幾重にも巻いたローブのような格好。
目を凝らせば胸の頂きや股間のかげりを見て取ることができそうだ。
どう見てもまともな人間とは思えない変哲だらけの怪人物。
どうやら彼女がこの村のリーダーのようだった。
啓太たちは本能的に何が来てもいいように身構えた。
それに対し、女性は柔和な笑顔を向け、軽く会釈しただけだった。

「夢の楽園へようこそ。私はここでみなさまに夢を提供しています、怪人のレゼントと申します。
 呼びにくければレゼ、とでもお呼びください」
「・・・!?」

いきなりターゲットに自己紹介され、啓太はその目を見開いた。
まさかこんな人前で、堂々と名乗るとは思わなかったのだ。
混乱する啓太に、目の前の怪人はどこまでも優しく微笑むのみ。

「怪人だからと言って、そんなに驚かないでください。
 私は非戦闘型と言って、戦う力のない、弱い怪人なのですから。
 私にできることと言えば、ここを訪れた方にお望みの夢を提供することくらいですよ」

自分の正体を何の臆面もなく口にする謎の怪人。
啓太は彼女の意図が読めず、困惑を深めていく。
だが彼女の言葉に深い意図など何もない。
ただ、初対面の人に当然のように自己紹介しただけだったのだ。
なぜ自分から弱点を明かすようなマネをするのか?
啓太は彼女の考えが読めず、ただただ混乱するばかり。
シャーマンが手を握ってくれなかったら、もっと混乱していただろう。
混乱を深めていく啓太に、さすがにレゼントも心配になったのだろう。
『大丈夫ですか』と言いながらその手を差し出したそのときだ。

パンッ!

「あうっ!?」
「『その手』で啓太様に触るな・・・!」
「しゃ、シャーマン!?」

今まで事の成り行きを見守っていたシャーマンが、ものすごい形相でレゼントの腕をたたき払ったのだ。
あれだけではまだ足りないとばかりににらみつけるシャーマン。
先ほどからの彼女の変わりよう。いったい彼女はどうしたというのだろうか?
啓太があっけに取られていると、レゼントのまわりには集まった人たちが、まるで重体の患者を扱う医者のように彼女をいたわっていた。

「おお、レゼント様・・・!」
「大丈夫かい?痛くないかい?」
「だ、大丈夫です、みなさん。このくらい平気ですから」

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