PiPi's World 投稿小説

世界の中心で平和を叫ぶ。第2部
官能リレー小説 - SF

の最初へ
 171
 173
の最後へ

世界の中心で平和を叫ぶ。第2部 173

またあるものは生きるために人間を襲い、捕食する。
しかし現実は非情にも壊れた彼らからさらに記憶や人格を奪い、怪人としての尊厳さえも消していく。
そうして残ったものは怪人であったものの残骸。
生きながらにして死んでいる『生ける屍(リビングデッド)』。
それが野生化怪人が亡者と呼ばれるゆえんであり、野生化と冠している理由である。
基本的に野生化怪人は見つけたら殺すことが定石とされている。
殺してやることが野生化した彼らへの、何よりの慈悲になるだからだ。
シャーマンから野生化怪人の説明を聞いた啓太は、夢とクロックが自分にこの訓練で何をさせようとしていたのか、すぐにわかった。
彼女らは・・・啓太に野性化怪人を殺させようとしているのだ。

「あんの・・・バカどもがっ・・・!」

啓太はクロックたちの策略に気づいて憤った。
夢の場合は啓太のことを第一に考えてるから、クロックの目的とは違うのかもしれないが、それでも主人に人殺しをさせようなんて腐った考えを許すわけには行かなかった。
しかし。いくら人殺しをしたくないとは言え、このまま帰ることもできない。
このまま帰ってみたところで、別の誰かが派遣されてこの先にいるであろう、野生化怪人を殺害するだけだ。
あの2人のことだから、『啓太様のために〜』『野生化怪人は危ないですから〜』とか何とか言って事後報告しかねない。
人殺しをよしとしない以上、どの道啓太は先に進むしかないわけである。
・・・となると問題は啓太にその野生化怪人と戦えるか、もしくは止められるだけの実力があるかが鍵になってくる。
相手は自分の正体すら見失い、怪物と化した改造人間だ。
いくらサポートにシャーマンがついているとは言え、用心するに越したことはない。
啓太は夢たちへの処罰をいったん忘れ、再びシャーマンから情報収集を図ることにした。
いくら立ち直ったとは言え、心身ともにズタボロにされた上に千羽を殺しかけたのだ。
もうあのような思いは二度としたくなかった。
まして今度は本物の殺し合いをさせようと言うのだから・・・。

「で?この先にいる怪人ってのは、オレでも勝てる相手なのか?」
「はい。何でも元は非戦闘型の怪人らしく・・・。
 人食いではありますが、攻撃能力は皆無だということです」

人食いという時点で十分脅威なのだが。
啓太はそう突っ込みたくなるのを何とか飲み込み、話を進める。

SNSでこの小説を紹介

SFの他のリレー小説

こちらから小説を探す