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世界の中心で平和を叫ぶ。第2部
官能リレー小説 - SF

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世界の中心で平和を叫ぶ。第2部 172

啓太の相談に乗ったシャーマンから啓太が立ち直ったことを聞かなければ、今のように仕事に集中することすらかなわなかっただろう。
自分がやらせている以上、嫌われるのは覚悟の上だが、啓太が苦しむことはそれを上回る苦痛であった。
だがシャーマンの話を聞く限り、それほど心配することはないだろう。
自分の愛する主人は自分の道を確実に進み始めた。
だからこそ夢は毅然とした様子で書類の束と戦い続けることができるのであった。

――――

「『野生化怪人』?それが今回の相手なのか?」

その頃。啓太とシャーマンは三方町から少し離れたところにある山の中を歩いていた。
シャーマンによると、ここに今回の相手である野生化怪人なるものがいるらしい。

「はい。それを倒すことが今回の訓練です」
「野生化怪人ねぇ・・・。要するにサルみたいに俊敏な怪人ってことか?」

聞き慣れない言葉に、啓太は頭の中で森を縦横無尽に飛び回る、サルのような怪人を想像する。
するとシャーマンにもそのイメージが伝わったのか、彼女は違うと首を横に振った。

「野生化怪人とは、啓太様が想像されている獣人型怪人ではありません。
 捨てられた飼い犬が野犬となって人を襲うように・・・故障して人を襲うようになった怪人のことを指すのです」
「・・・?それって組織の命令を受けて暴れる怪人とどう違うんだ?」

啓太はシャーマンの言っている意味が理解できずに質問する。
当然の質問だ。だができるなら彼はこの質問をするべきではなかった。
いや、正確にはこの言葉を知らない世界にいたほうがよかったと言うべきか。
野生化怪人。それは人間を襲わずには生きていられない、壊れた怪人たちの亡者の姿を指し示す言葉なのだから。
そして啓太はシャーマンから野生化怪人について説明を受けた。
怪人はその力の大きさゆえに、常に何らかの束縛を受ける。
主人がいないと何もできなかったり、定期的なメンテナンスを必要とすることはその際たるものの一例と言えよう。
だが。主人やメンテナンスを必要とする怪人がそれらを受けられなかったらどうなるだろう?
答えは『死ぬか壊れるかする』である。
壊れた怪人たちの多くは異形と化し、人間を襲うようになる。
あるものは自分に残されたわずかな記憶と人格を取り戻すために人間を捕らえては傷つけ殺し。

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