世界の中心で平和を叫ぶ。第2部 18
「何をとぼけている?
貴様のことだ、この事態は末に予想済みなのではないのか?
その有能さゆえに旧組織の幹部たちに疎まれ。閑職に追いやられていたオマエなら、な」
「クッ・・・ククク。さすがは夢だ。
オマエにはなかなか隠し事ができん」
「茶化すな」
クロックの言葉に、夢はわざとらしい演技はやめろとばかりに口を出す。
するとクロックはニヤリと意味ありげな笑みを浮かべる。
そう。全ては何もかも承知の上で始めたことだった。
クロックはあの3人を捕まえたときにこう考えた。
啓太を立派な指導者にするためにはさまざまな教育が必要だ、と。
そのために怪人でないエレメンタル・ガーディアンの3人はまたとない絶好の『教材』であった。
彼女らを啓太の護衛兼メイドとして配置して女性に対する扱い、免疫を学んでもらう一方。
啓太のためには暴走しがちな怪人の危険や、怪人が必ずしも啓太に絶対服従するとは限らないことなどを教えることができた。
「これからもあの3人は、啓太様にさまざまなことを教えていくだろう。
それを考えれば謹慎覚悟でやった甲斐があったというものだ」
「できれば2度と相談なしでこんなマネは勘弁してもらいたいものだな。
オマエのせいでどれだけ組織が、啓太様が危険にさらされることになったと思っている!?」
「ふん。私はオマエとは違う。啓太様に立派な指導者となっていただくためには手段を選ばん」
ピシュンッ・・・。
その言葉が言い終わるより一瞬早く夢の糸がクロックの首に絡められた。
「・・・貴様の行動が啓太様を思ってのことだということは重々承知している。
だがそのためにあの方を悲しませてみろ。
私がこの場で貴様の首を落としてくれる・・・!」
静かなる怒りが警告となって部屋に充満する。
その中でクロックは怯えるどころか、嘲りすら浮かべて笑う。
「何を甘いことを。これでもまだ甘いほうだぞ?
今、少しでもさまざまな経験を積ませておかねば、いつか啓太様は罪の意識から壊れてしまうのだぞ!?
貴様ほどの怪人なら、今の発言はただの甘やかしでしかないことがわかっているだろう!?」
その言葉に夢は沈黙をもって答える。
それはクロックの問いに対する何よりの答えであった。
「・・・そんな思いをさせないようにすることこそが、我々の役目でもある」
「何を甘いことを言っている!?
そんなことなど不可能だと言うことが、わからんと言うのか!?」
「そうは言わん。だが啓太様にはできるだけ今のままでいてほしい・・・。
これは私のわがままだ」
「・・・後悔するぞ」
「覚悟の上さ」