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世界の中心で平和を叫ぶ。第2部
官能リレー小説 - SF

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世界の中心で平和を叫ぶ。第2部 169


「ところで今日は見送りとかいないのか?
 ウチって過保護な連中が多いから、てっきり夢たちも来るとばかり思っていたのに・・・」

そう。待ち合わせ場所の会議室にはシャーマン以外には誰一人待っていなかった。
過保護な夢や腹黒クロックは間違いなく来ると思っていたから、この訓練で何をたくらんでいるのか、問いただしてやろうと思っていたのに・・・。
疑問と無念が渦巻く中、シャーマンも困ったような様子で誰もいない理由を説明し始めた。

「夢様ほか、見送り希望のものは確かにいたのですが・・・。
 何やら急な仕事が入ったとのことで、みな泣く泣く仕事に戻っております。
 お見送り予定の方々から、啓太様あての伝言を頼まれていますが・・・お聞きになりますか?」
「・・・その中で任務に関する説明とかしてるの、あるのか?」

微妙な間を空けて啓太はシャーマンに尋ねた。
聞いてみたい気もするが、大体内容は同じだろうし、全部聞いていてはそれだけで日が暮れてしまうだろう。

「ございません」
「ならいらない。夢かクロックを呼び出すこともできないのか?」
「残念ながら」
「そうか。おまえはこの訓練の目的が何なのか、聞いてないのか?」
「いいえ。私はクロック様から啓太様をサポートするようにとだけしか」

啓太はシャーマンの回答を聞いて、夢たちを呼び出すことをあきらめた。
できれば無理にでも呼び出して、この訓練の目的を聞き出したかったのだが。
シャーマンがそう言うなら、たぶん無理なのだろう。
彼女との付き合いは昨夜からの短いものだが、シャーマンは啓太からそれなりの信頼はされていた。

「仕方ない。それじゃあ連中の思惑に乗らないように気をつけながらがんばるしかないか。
 どうせ訓練の内容は説明されているんだろ?」
「はい」
「ん。じゃ、道すがら説明よろしく。それじゃ鈴、空。
 行ってくるからな。ほらいつまでもめそめそしてんな」
「うう・・・だったらあんなにいじめないでくださいよぉ・・・」
「啓太様、怒るとものすごい怖いって自覚してるんですか?」
「だったらオレに怒られないようにもっと人間らしく行動できるようにいろいろ勉強してなさい。
 それじゃ、夢とクロックにく〜れ〜ぐ〜れ〜も!よろしく言っといてくれな」

啓太はそう言うと、あっけらかんとした様子でシャーマンの案内で外へと出て行った。
昨夜あれほど苦悩していた人物と同一存在だとは思えない、軽い足取りだった。

「・・・ねえ、お母さん」
「何、空?」
「啓太様・・・お強くなられたね。どこが変わったのか、わからないけど・・・何かお強くなられた」

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