PiPi's World 投稿小説

世界の中心で平和を叫ぶ。第2部
官能リレー小説 - SF

の最初へ
 166
 168
の最後へ

世界の中心で平和を叫ぶ。第2部 168

そのまわりでは『役立たずには死を!』『啓太様をを取り戻そう!』とかわけのわからない看板を振り上げながら熱狂するギャラリー。
啓太はこの異常事態を理解しようと数分費やしたところで考えても無駄だということに気がついた。

「おお、啓太様、ちょうどいいところへ。これから無能なバカ2人を処刑するところだ。」
「すんな。だいたい2人ともなにやらかしたんだよ。
 おまえたちこそバカやってないで降ろしてやれ」
「む。そうはいかん。コイツら2人は千羽の抜け駆けを許した大罪人―――」
「お・ろ・せ」
「・・・・・・」

能力を使った強制ではなかったが、それでも彼女らにとって啓太の命令は絶対である。
チェスたちはしぶしぶながら糸田親子を十字架から降ろし、解放した。

「ふえぇぇん、啓太様ぁ・・・!」
「まことに・・・まことに申し訳ございません・・・!
 1度ならず2度までもお助けいただいて・・・!」
「・・・何か知らんが、くだらないことで殺されかけんな。
 こっちは遅刻確定なんだから。そもそもなんで磔にされてたんだよ?」
「「うっ!?」」

その言葉に鈴と空は言葉につまり、チェスたちもあわてて目をそらした。
それに何かを感じた啓太は親子の頭をぽんとたたくと。

「何があったか、逐一話せ・・・!」

背景に『ゴゴゴゴ・・・!』という擬音が見えるくらいの迫力で、鈴と空にそれはそれは優しい笑顔を向けて問いただす。
それがブチ切れる寸前であることを瞬時に理解した2人はあわてて解説した。
かつてアパートに住んでいたときのあの恐怖の記憶を思い出しながら。

――――

それから数十分後。
頭にでかいたんこぶを1つずつこさえた糸田親子と啓太はシャーマンの待つ会議室へとやって来ていた。

「ずいぶんと・・・遅かったんですね?」
「ああ。ちょっと野暮用でな」

途絶える会話。啓太の背後でしくしく泣いている親子の声がうっとうしい。
昨夜啓太にアドバイスしたシャーマンは、啓太が遅刻してくることくらいは予想していたが・・・。
さすがに鈴と空が泣いているのは想像していなかった。
ちょっと能力を使えば何があったかわかるだろうが、啓太はそんな探られ方など望んでいないだろう。
やむなく啓太に聞くことにした。

「あの・・・啓太様?何で鈴様と空様は泣いていらっしゃるんですか?」
「ヒトを組織の共有財産と勘違いしているバカ者たちとその監視者たちに教育的指導をしていただけだ。
 気にしなくていい」
「は、はあ・・・?」

ホントにいいのだろうかと思うシャーマン。
しかし3人の様子から何やら聞いてもいけない気がしたので、あえて放置することにした。

SNSでこの小説を紹介

SFの他のリレー小説

こちらから小説を探す