PiPi's World 投稿小説

世界の中心で平和を叫ぶ。第2部
官能リレー小説 - SF

の最初へ
 164
 166
の最後へ

世界の中心で平和を叫ぶ。第2部 166

「て、て言うか、何で私たちに相談してくださらなかったんですか!?
 ちょ、待ってください啓太様ーっ!」
「待て待て、待つのはおまえらだ、鈴!空!
 おまえら、啓太様のおそばにいながら怪人の抜け駆けを見逃したのか!?
 昨日、いったい何があったのか説明しろ!
 逐一、懇切丁寧にしっかりと!」

背後で大騒ぎする鈴たちを無視して啓太は千羽のいる治療室へと入る。
千羽のいる治療室は機械とコードだらけの殺風景な部屋だった。
部屋の中央には1本のカプセルが柱のように立てられ、その中で生々しい傷もあらわにぷかぷかと浮かぶ千羽の姿があった。

「よお、千羽。元気か?・・・って聞くまでもないか。
 そのためにオレはここまでやってきたんだから、な」

啓太と千羽しかいない空間で、啓太はそう言って苦笑する。
そこには先ほどまでの明るさはない。
事なかれ主義のへたれ啓太がそこにいた。
いつもの調子に戻った啓太は、突然その場にしゃがみこむと千羽に向けて深々と頭を下げた。

「すまなかった。何も考えず、夢やクロックの口車に流されたせいで、オレはおまえにとんでもないことをしちまった・・・!」

しかし医療用カプセルの中で浮かぶ千羽からの返事はない。
そもそも啓太の謝罪すら届いているかさえ怪しい。
だが啓太はそれでも土下座せずにはいられなかった。
自分のしたことはこんなことぐらいでは許されないくらいに罪深い。
千羽は啓太の所有物だ。
結果として死ぬことになっても、千羽は啓太を恨むことはないだろう。
だが啓太は土下座して謝罪する。
それは啓太の一般社会で生きてきた人間として考え抜いた末の答えであった。
これができなければ、啓太は本当の意味で悪の組織の世界に入ってしまうことになりそうだから。

「オレ、バカだからさ。
 おまえを殺しかけたときはどうしていいかわからなかったし、一晩考えてもこんなことしか思いつかなかった。
 だけどさ。オレ、これからおまえに誓うよ。
 これからはもう夢やクロックたちに流されたりしないで、自分の意思で歩いて前に進むって。
 オレは別に悪の組織の総統になりたかったわけじゃない。
 この町の支配者になりたかったわけでもない。
 ただおまえらと前と同じようにバカやりながら暮らしたいだけなんだ。
 だからこれからはそのために努力する。
 誰一人殺したり傷つけることなく、普通に暮らせるように」

今まで啓太は夢たちと出会ってから、流されるままに生きてきた。

SNSでこの小説を紹介

SFの他のリレー小説

こちらから小説を探す