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世界の中心で平和を叫ぶ。第2部
官能リレー小説 - SF

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世界の中心で平和を叫ぶ。第2部 165


啓太が向かった先は医療部。
厳しい訓練で怪我をした怪人たちでごった返している中、ここの最高責任者である16人の群体怪人チェス・ボードが出迎えてくれた。
啓太はチェスの質問に笑顔を崩すことなく首を横に振った。

「うんにゃ。訓練行く前に、千羽に会っておきたくてさ」
「千羽に?悪いがアイツは今、治療中だ。会うのはかまわんが話なんてできないぞ?」
「それだけで十分だ。オレは出かける前に、どうしてもアイツと会っておきたいんだ」
「そうか?それでいいなら私はかまわんが。じゃあ、ついてきてくれ。案内する」

他にも仕事が山積みであることもあり、チェスはそれ以上の追求はせず、さっさと啓太を千羽の元へと案内する。
その後ろでは昨日までとはまるで別人のような啓太の様子に、鈴と空はこそこそと内緒話をしていた。

「ね、ねえ空。やっぱり今日の啓太様、変じゃないかしら?」
「変なんてもんじゃないでしょ、お母さんっ!
 昨日はあんなに落ち込んでたのに、今朝にはもう立ち直っているってだけでも信じられないのにっ。
 ご自身で傷つけられた千羽様のお見舞いに行くなんてどう考えたって変だよっ!?」
「そ、そうよね・・・。ど、どうしたらいいのかしら、ここはやっぱり夢様かクロック様にご報告したほうがいいのかしら?」
「それよりチェス様にご相談するのが先でしょ!?
 今の啓太様、絶対変な薬か頭を打ったかしたに決まっているんだからっ」

・・・何気にひどいことを言う糸田親子。
この会話から、普段の啓太がいかに及び腰でどんな正確をしているかがうかがえる。
ではそんなへたれな啓太がここに来た目的とは何なのだろうか・・・?

「ここが千羽の治療室だ。
 自動治療中だから問題はないかと思うが、何かあったら私かその辺の怪人に声をかけてくれ」
「ああ、ありがとな。助かったよ」
「・・・・・・」
「ん?どした?すっごい妙な顔なんぞして」
「いや・・・自分の所有物に礼を言うヤツもめずらしいというか・・・。
 何かあったのか?今なら悩み相談から精密検査まで何でもしてやるぞ?」

チェスは啓太を心配してそう言った。
鈴と空も言葉こそ口にしないが、ぜひ検査を受けてほしいらしく、その目は口以上にその意思を雄弁と語っていた。
だが啓太はけろりとした様子でこう答えた。

「悩み相談ならもう済ませてあるよ。
 おかげで悩みすぎて10円ハゲや胃潰瘍もできずに済んだしな」

ザワッ・・・!?

その言葉に鈴たちだけでなく周囲の怪人たちまでもがその動きを止めた。
一方の啓太はそれだけ言うと、軽く手を振ってその場を後にした。

「ちょっ・・・ちょっと待ってください啓太様!?
 い、いつの間にお悩みを打ち明けられるような関係の人をおつくりに・・・っ!?」

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