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世界の中心で平和を叫ぶ。第2部
官能リレー小説 - SF

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世界の中心で平和を叫ぶ。第2部 164

そのことを夢やクロックから聞いていた鈴と空は追い出される覚悟でベッドに近寄る。
するとそこには。

「すー、すー・・・」
「「・・・え?」」

安らかに寝息を立てる啓太の姿。
その顔には昨日千羽に痛めつけられ、殺しかけた男と同一人物とはとても思えない。
糸田親子は思わずマヌケな声を上げてしまった。

「・・・んあ?もう朝か?」

その声に反応して目覚める啓太。しかしそこにはやはり昨日のことに関する怒りや無念はまるで見えない。
あまりにも平然としているものだから、2人は逆に何か不安なものを感じておずおずと反応した。

「お、おはようございます啓太様」
「もうすぐ訓練の開始時刻が迫っておりますので・・・。
 その、申し訳ありませんが準備のほうをお願いいたします」
「おぉ?もうそんな時間か。わかった、すぐに準備するよ」

軽く、はきはきとした答え。
ことごとく予想を裏切る啓太の反応に、鈴と空はますます不気味なものを感じ取った。

(ね、ねえ空っ。啓太様どうしちゃったの?)
(わ、私に聞かれてもわからないわよ、お母さんっ。
 も、もしかしたら昨日の訓練で頭かどこかをいためられたのかも・・・)
(!?)

空の不用意な発言に母の鈴は敏感に反応した。
啓太は自分たちの命の恩人だ。その一大事とあれば彼女が大きく反応したのも無理からぬことだった。

「お、そうだそうだ。出発する前にいくつか寄りてえところがあるんだけどさ。
 ちょっと寄ってってもいいか?」
「え?で、でもお時間が・・・」
「あぁ、クロックや夢のことなら気にすんな。
 何か文句言ってきたらオレが黙らせてやるからさ」
「「え・・・?」」

その言葉に親子2人はそろってマヌケな声をあげる。
まさか啓太の口からそんなセリフを聞くなんて思ってもいなかったのだ。
いつもの啓太なら、クロックたちに怒られることを気にしてあわてて出てくるところだろうに・・・。
今日の啓太は何かが違った。
訓練のための出発時間が目の前だというのにあわてる様子は微塵もない。
それどころか遅刻することなんぞ、気にすることなく堂々と寄り道していくなんて言っている。
鈴と空としてはあの夢とクロックを怒らせるようなマネはしたくないのだが、主人である啓太の意思に逆らうこともできない。
2人は何か言わなければと思いつつ、結局啓太の意思に従うこととなった。

――――

「おお、啓太様?今日は訓練の日じゃなかったのか?
 それとも出発前にウチの薬が必要なのか?」

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