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世界の中心で平和を叫ぶ。第2部
官能リレー小説 - SF

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世界の中心で平和を叫ぶ。第2部 151


(ああ、お優しい啓太様。私たちのために、そんなにもお心を痛めておられたなんて)

そんな苦しむ啓太の心の変化を、シャーマンは痛いほどに感じていた。
確かに今の彼女は態度やしぐさから感情を推測するくらいのことしかできない。
だが啓太のために生き、啓太のために死ぬことを至上の喜びとする彼女ら怪人にとって、その痛みは家族以上につらく、理解できるものであった。
だからシャーマンは考える。啓太が少しでも苦しむことなく、目標に向かえる方法を。

「・・・啓太様。少し失礼いたします」
「え?」

何をするのか。そう聞く前にシャーマンは啓太のほほに両手を添えていた。
啓太の目の前に映るのはSMチックな目隠しをしたシャーマンの端正な顔。
顔の半分をゴツい目隠しで覆われているというのに、その美しさはそれでもなお失われておらず。
むしろミロのヴィーナスの腕のように、見えない分だけ彼女が美しく見えた。

「しばし動かないでください」
「・・・っ!?」

シャーマンの一言で啓太は我に返る。
不覚にも彼女の顔に見とれてしまっていた。
無骨な目隠しごしに啓太をしばし見つめるシャーマン。

「・・・ありがとうございます。もう十分でございます」

そして意味不明なお礼とともに彼女は啓太を解放する。
シャーマンが啓太に何かしたのは誰の目から見ても明らかだ。
言い知れない不安を感じつつ、啓太は尋ねた。

「・・・何をしたんだ?」
「占いの真似事です。今の啓太様が苦しむことなく理想の世界へ進む。
 そんな道を模索しておりました」
「ほ、本当にそんな方法があったのか?」

それはあまりに都合のよい話。
本来ならばありえない話だが、存在そのものがありえない怪人の言葉に、啓太は思わず身を乗り出した。
そんな啓太の様子にシャーマンは苦笑しながら話してくれた。

「今、啓太様にはY字路に立っておられます。
 1つは今まで歩いてきた道。
 1つはアスファルトで整備され、看板・信号まで用意された安全な道。
 1つは作りかけのまま放置された獣道。
 啓太様は目的地に行くために、そのいずれかを選ばなければなりません」

シャーマンが何を言っているのかは大体見当がついた。
彼女は、啓太がどうするかを道という形になぞらえているのだ。
今まで歩いてきた道とは、過去。
すなわち怪人たちと縁を切って一般人に戻るかどうかを表している。
獣道とは、おそらく犠牲の上に成り立つ過酷な運命のことだろう。
しかしわからないのは2番目の整備された道。
整備されているのなら、これほど進みやすい道もないだろう。
かと言ってシャーマンがそんな簡単な選択をさせるはずもない。
啓太はその意味がわからず、その場で考え込む。

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