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世界の中心で平和を叫ぶ。第2部
官能リレー小説 - SF

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世界の中心で平和を叫ぶ。第2部 150


アパレント・アトムの怪人は程度の差こそあるものの、主人である啓太を苦しめるようなことは絶対にしない。
啓太もそれを理解しているらしく、警戒を解こうとはしなかったが、『出て行け』などとそれ以上拒絶するようなこともしなかった。
それだけでもシャーマンにはとてもうれしいことだった。
何より主従の関係を抜きにしても啓太の行動は好感が持てる。
啓太が怪人たちにもてるのは、単にご主人様だからというわけではないことを本人は知る由もない。
怪人たちが言ったところで信じられるとも思えないから。

「・・・どのくらい読めるんだ?オレの、心・・・」
「啓太様の心臓の鼓動や筋肉の収縮などから、表面的な感情を読むくらいです。
 観察眼の鋭い、カンのいい人間くらいのレベルとお考えください」
「・・・その程度なのか?じゃあ何でオレが苦しんでいるのがわかった?」

自分の心をすべて読まれているわけではないと聞いてホッとした反面、啓太は当然の疑問をシャーマンにぶつけた。
インターホンごしの短いやり取りで、なぜあそこまで自分の心打つ言葉を出すことができたのかと。
その言葉にシャーマンはためらいがちにこう答えた。

「・・・啓太様が、とてもおつらそうな顔をなさっていましたから」
「つらそうな・・・顔?」
「はい。どこを進んでいいのかわからない、何をしたらいいのかもわからない、まるで途方にくれた子供のような、そんなお顔をされていらっしゃいました」
「・・・!!」

その言葉に啓太は目を見開く。その言葉はあまりにも的を得た言葉であったからだ。
今の啓太は迷っていた。仲間と傷つけあう今の状況は間違っていないのか、と。
そもそも啓太は誰かを傷つけてまで果たそうという信念はない。
怪人たちを救いたい思いはあるが、それは痛みを伴わない理想論で、本当の意味で傷つく覚悟があったわけではない。
夢とクロックに流されるばかりで、自分では何一つなしていない。
そんな自分と状況が啓太を悩ませていた。
自分は一般常識にすら欠けた怪人たちを心配させるほどに弱っていたのか。
そう思うと啓太はまた自分が情けなくなって・・・自嘲気味に笑ってしまった。

「は、ハハッ・・・。そっかそっか。オレはそこまで情けない顔をしていたか」

そう言う啓太の顔はどこか憔悴しきっていて・・・その言い方はどこか投げやりだった。
それは一般人として生きてきた啓太の抱え込んできた苦しみと悲しみ、ストレスがなした啓太本来の態度であった。

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