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世界の中心で平和を叫ぶ。第2部
官能リレー小説 - SF

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世界の中心で平和を叫ぶ。第2部 147

その自分に夢自ら啓太のボディーガードを頼みに来るなんてまったくの想定外だった。
シャーマンの心情が表に出ていたのだろう。
夢はふっと苦笑を浮かべながらシャーマンを選んだ理由を話した。

「本来ならおまえの言うとおり、幹部クラスの怪人や信頼におけるヤツのほうがいいんだろうが・・・。
 たぶん、今の啓太様にはおまえのようなヤツがいいはずなんだ」
「??」

夢に言いたいことがわからず、ますます疑問が深まるシャーマン。
夢はそれにかまわず話を続けた。

「今、啓太様は深く傷ついておられる。
 それは道具に過ぎない我々には理解できない感情だ。
 だから啓太様と面識のある連中では、必要以上に啓太様を励まそうとして、逆に苦しめてしまいかねない。
 今、啓太様に必要なのはその心をわかってやれる怪人。
 おまえのように、心を読むことができるような、そんなヤツのほうがいいんだ」

シャーマンは夢の言うことがほとんど理解できない。
わかったのは、今の啓太に必要なのは面識がなく、心を読める怪人がいいということだけだった。
クロック派に属するシャーマンは少し考えてから返答した。

「・・・わかりました。私でよければ力になりましょう」

断る理由はないし、自分の能力が主君の役に立つというなら、これほどうれしいことはない。
その言葉に夢は一瞬、ホッと安堵の表情を浮かべる。
クロックの息のかかった怪人が自分の頼みを聞いてくれるか、内心不安だったのだろう。

「そうか。それでは啓太様をよろしく頼むぞ」
「おまかせください」

こうして次の特訓のパートナーは、啓太の知らぬところで夢の細やかな配慮の元に決定したのであった。

――――

その日の夜。啓太は10日間ぶりに自室に戻ってきた。
鈴たちはいない。啓太の苦しみを感じた鈴や空たちはお供を申し出たが、啓太がそれを拒絶したのだ。
無理もあるまい。
今回は幸いとは言え、ヒト1人を大ケガ・・・下手すれば殺しかけてしまったのだから。
部屋に戻った啓太が最初にしたことは、大声で泣くことだった。
殺さずに済んだ安堵感と、激情に任せて殺しかけた恐怖感に耐え切れなくなったのだ。
啓太の頭の中でクロックとのやり取りが何度も反芻される。

『啓太は契約した怪人たちを自由に操ることができる』
『この能力は啓太の能力というより、啓太のDNAを取り込んだ怪人たちの機能の1つであるということ』
『この能力は怪人の主人として当然のこと』
『啓太がその気になれば、怪人に一言命令するだけで自殺させることもできる』

啓太は自分を恐れた。簡単にヒトを殺そうとした自分を。
簡単にヒトを殺せるようになってしまった自分を。
啓太だって人間だ。憎い相手を殺したいと思ったことは数え切れない。
だが彼は想像の中でこそすれ、現実では暴力で誰かを傷つけることさえできなかった。

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