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世界の中心で平和を叫ぶ。第2部
官能リレー小説 - SF

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世界の中心で平和を叫ぶ。第2部 146


クロックはそんな啓太の思考をいともたやすく読んで説明を続ける。

「1分1秒を争う事態において、思考なんてものは邪魔なだけ。
 持てる力をすべて出し切らなければならないとき。
 私たちは意識を断ち切り、持てる力をすべて出して実行するように作られているのです。
 それが鈴や空たちに千羽を傷つけた記憶のない理由ですね」
「ま、待てよ!もし仮にそうだとしても・・・オレがそんな命令を出すわけないじゃねえかよっ!?」
「そうでしょうね。普段の啓太様なら間違ってもそんなことは言わないでしょう。
 普段の啓太様なら・・・ね。でも先ほどまでの啓太様はつらく長い訓練のせいでストレスがかなりたまっていらっしゃった。
 それこそ、千羽を殺してでも開放されたいと思った。違いますか?」
「・・・ッ!!」

その言葉に啓太は息を飲む。
確かに千羽を倒す前、啓太は千羽に殺意を抱いた。
幾度となく死にかけ、ねじ伏せられ、もがき苦しみ続けた果てに彼女の死を願った。

「もともとこの権利は緊急時に使用するものなので、簡単には使えないのですが・・・さすがは啓太様。
 見事その力をおつかいになられましたね」

うれしそうに啓太を褒め称えるクロック。
しかし啓太の耳にはそんな言葉など入ってはいなかった。
人間どんなものでも相性や好みというものがある。
好きなタイプもいれば苦手なタイプ、関心を持てないタイプもいる。
その中で嫌いなタイプには殺意や憎悪などの悪意を持つことはよくある話。
だがそれを実行に移すものは驚くほど少ない。
そこには利用価値や罪悪感、忍耐力などさまざまなものが絡んでいるからである。
それを実行に移せるのはそれだけの覚悟を持っているからである。
しかしその覚悟がないのに実行してしまったら?
殺す覚悟がないのに殺してしまったら?

「これで啓太様は見事、我々怪人の生殺与奪の権利を手にしたことになります。
 この力は今後の戦いにおいて重要な力となるでしょう」

クロックは自らの引き起こした愚かさに気づく気配もなく、うれしそうに語る。
何の覚悟もなくその手を血に染めてしまった啓太の心情にまるで気づくことなく。

――――

その頃。夢は次の訓練に向けて、ある人物のもとを訪れていた。
彼女の名前はカーズド・シャーマン。
かつてエレメンタル・ガーディアンの3人を手を触れることなく瞬殺した強者である。

「私が・・・啓太様のお供を?」
「ああ。おまえならば実力も確かだし、啓太様のお心をわかってやれるだろう。
 クロックも文句を言うまい」

夢の発言に、シャーマンは返事に困った。
正直、主人である啓太のそばにいて、その役に立てることはうれしい。
しかし自分はどちらかと言えばクロック派に属する怪人だ。

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