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世界の中心で平和を叫ぶ。第2部
官能リレー小説 - SF

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世界の中心で平和を叫ぶ。第2部 143


「・・・うッ!?」
「ひッ!?」

千羽を抱き起こしたとき、ビーストは呻き、鈴は思わず悲鳴を上げた。
薙も声こそ出さなかったが驚いた。
空に至っては衝撃が強すぎて、声すら上げることができなかった。
それほど千羽の傷はひどかった。
胸の中央に1つの拳のあざがめり込んでいて、そこを中心に腹や胸のいたるところが浅黒く変色している。
おそらく内臓破裂でもしているのだろう。
この様子では肋骨も折れているに違いない。
これだけでも十分だというのに、まだやり足りなかったのか、1本の刀傷が左肩から右わき腹にかけてつけられている。
対する啓太は疲労こそ激しいが、それだけで鈴たちが意識を失う前とほとんど変わりのない様子だ。

(まさか啓太様が千羽をここまで?・・・ありえない。
 今の啓太様の実力で千羽をここまで叩きのめすなんて・・・!)
(これは・・・私の拳の痕?バカな!?私は千羽に手出しなんてしてないぞ!?)

戦闘型怪人であるビーストと薙は、千羽の様子からそれぞれある仮説を立てる。
しかしそれはどうしてもありえない仮説。
素人レベルの啓太がなぜ戦闘型怪人の千羽に勝てた?
なぜ助太刀に入った記憶もないのに、千羽に薙の拳の痕がついている?
それはどう考えてもありえない仮説。
しかしまわりの状況を見れば、その仮説は限りなく真実に近いのだ―――。

「啓太様!?しっかりしてください、啓太様ッ!?」
「いったい何があったのです!?お教えください、啓太様ッ!?」

2人が愕然とする中、非戦闘型怪人である鈴と空が啓太を介抱しつつ状況の説明を求める。
それは彼女たちが残酷すぎる真実を知るための唯一無二の方法であったから。

(・・・何だ?みんな何を騒いでいる?こっちはもうヘトヘトだって言うのに・・・)

みなが騒ぐ中、啓太は呼吸を整えながらそんなことを考えた。
どうやら疲労が激しすぎて、現状を把握していないようだ。

(・・・あれ?そう言えばオレ、何でこんなに疲れてんだっけ?
 何かすごく大事なことをしていたような・・・あッ!?)

その瞬間、啓太は自分が千羽と戦っていたことを思い出し、あわてて顔を上げた。

「そうだ!千羽はどうなった!?オレ、最後のほうの記憶がトンでてよく覚えて―――」

ない、そう言おうとした啓太が見たものは、血だまりの中、素人目から見てもかなりの重傷を負った千羽の姿であった。
そのあまりに痛々しい姿に一瞬啓太は誰がやったのだと思ってしまったほどだった。

(何だ、これ?誰がやった?オレ?でもオレはこんなひどいことできるはずがない。
 それじゃビーストや薙たちが?)

しかしそんな啓太の考えを否定するかのように、ビーストたちは啓太に事情の説明を求めている。

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