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世界の中心で平和を叫ぶ。第2部
官能リレー小説 - SF

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世界の中心で平和を叫ぶ。第2部 140


その言葉に警部はわずかながら眉をひそめた。
今まで散発的だからと放置しておいて、都合が悪くなったから腰を上げるとは・・・。
警部は理屈を頭では理解していたが、それに納得することだけはいまだにできないでいた。
しかし連中が危険であることに変わりはない。
警部は漏れそうになる文句を飲み込んで姿勢を正した。

「了解しました。
 それでは私を含む5名により、世界の平和を乱すもの共に正義の鉄槌を下してまいります」
「うむ。よろしく頼むよ」
「全ては正義の名の下のために―――」

――――

特訓第1段階最終日。
この日の訓練も、啓太が突撃してはやられるというパターンの繰り返しだった。
しかし啓太が劣勢であるにもかかわらず、千羽は何やらやりにくそうに攻撃をいなし、反撃している。
確かにいろいろ攻撃にも工夫をしているが、それでも互角とは言いづらい。
なのに千羽はとても余裕のあるようには見えない。
どっちが格上でどっちが押しているのか、わからなくなる光景だった。

「うがああぁぁッ!!」
「ふっ・・・はアッ!!」
「ギャッ!?」

吹っ飛ばされてもすぐに起き上がって攻撃態勢を取る啓太。
その目には恐怖など微塵もない。
ただぎらぎらした目には明らかな苛立ちや怒り、敵意などが浮かんでいた。
そしてその様子を鈴たち治療班&監視班が呆然と見ていた。

「な、なあ。オレたちが見ているのは本当にあの啓太様なのか?」
「せ、拙者に聞くなっ。せ、拙者だって今見ているものが信じられんのだっ・・・!」
「ああ、啓太様・・・」
「あんなにおケガをされているのに・・・!」

啓太はこの2〜3日まともな治療もしていなければ、休憩もとっていない。
時間の全てを千羽を倒すことだけに注ぎ、集中しているのだ。
その劇的な変わりようは、訓練開始前の男と同一人物だと誰が信じられようか。

「はぁ・・・はぁ・・・!」

千羽はやや荒くなった呼吸を整えながら、言いようのない恐怖とやりづらさを感じていた。
確かに主人を傷つけるということにそれなりのためらいはある。
啓太に嫌われていることに恐怖も感じる。
しかし今彼女の心を満たしているのは、それらとはまったくの別物だった。
あの目でにらまれると身体の動きが鈍くなる。
啓太たちは気づいていないが、時折ものすごい恐怖が走って動きを一瞬にも満たない刹那、動きを止めてしまったこともあった。
その今まで感じたことのない感覚、啓太にないはずの謎の能力に千羽は怯え、恐怖していた。

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