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世界の中心で平和を叫ぶ。第2部
官能リレー小説 - SF

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世界の中心で平和を叫ぶ。第2部 134


「!?」

啓太は右手に生成された丸い小型の盾を前に出し、千羽の針を防いだのだ。
しかし刺さらないとは言っても電気は電気。
弱いながらも電気は盾を通じて啓太の全身を止めようとさいなみ続ける。

「うッ、ぎッ・・・がああぁぁああッ!?」

だが啓太は大きく吼えると、倒れそうになる身体に鞭打ち、そのまま前進を強行した。
そして勢いに任せて渾身のパンチをお見舞いしようと防御をといたその時だ。

ドボッ・・・!

「ごぽッ・・・!?」

突然啓太の左から衝撃が走る。千羽が蹴りを放ったのだ。
無様に地面をごろごろと転がる啓太。
始めは受け身もわからず顔面着地したこともあったが、何度もやられるうちに自然と受け身が取れるようになったのだ。
このところ啓太は、何度も死ぬかもしれないと思う攻撃を受け続けたせいで、ダメージを抑える方法や耐える術を学習し始めていた。
そして早く助かりたいと思う心がネコに追い詰められたネズミよろしく、反撃する気力を生み出していた。
その成果はまったくあがっていなかったが。
だが生きようとする意志は、確実に啓太に変化をもたらしていた。
盾を作るようになったことや、ダメージを恐れず動くようになったことはその顕著な例の1つだ。

「・・・ッ!?」
「「「け、啓太様ッ!?」」」
「千羽、貴様ッ!そこまで激しく攻撃することはないだろうッ!?
 啓太様を殺すつもりかッ!」

ビーストはそれだけ言うと、すぐに自分も治療の輪の中に入っていった。
しかし攻撃した千羽のほうは、何も聞こえていない様子で啓太を見ていた。
実はさっきの蹴りは危うく本気で攻撃するところだったのだ。
まさかあのヘタレの啓太がダメージを無視して来るとは思いもしなかった千羽は、とっさに爆発の針『バースト・ニードル』を使おうとしてしまったのだ。
啓太の能力なら問題ないかもしれないが、相手は自分の主人で素人だ。
万が一のことを考え、針の使用をやめたのである。
それでも放った蹴りの威力までは止められなかったが。

(・・・どうやらスパルタで行くと言いながら、私にもまだ甘えがあったみたいですね)

さっきはうまくいったが、今後もそうだとは限らない。
千羽は自らを鬼と化する覚悟の必要性を感じ始めていた。

――――

一方、夜の帳が落ちた三方町のオフィス街では。

「あーあ、つまんないな〜・・・」

1人の全裸の少女が瓦礫と化したビルの残骸に腰掛け、肩肘を突きながらぼんやりとそうつぶやいた。
見下ろせばそこは地獄のようだった。
道路やビルの壁はひび割れへこみ、ところどころで破裂した水道管の噴水や漏電によるものであろう火の手が上がっている。
そして破壊の限りを尽くされた景色に混じって破壊されたパトカーや瓦礫の下、陥没した道路などに赤い水たまりがささやかな彩を添えていた。

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