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世界の中心で平和を叫ぶ。第2部
官能リレー小説 - SF

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世界の中心で平和を叫ぶ。第2部 111


さすがは啓太の第1の従者(下僕)。
啓太のことをよく理解している発言である。
しかし啓太の理念を守ろうとする限り、遅かれ早かれこうなることは避けられなかっただろう。
夢としてはゆっくりできるだけ時間をかけて啓太に決めさせようと思っていただけに、今の啓太の苦しみが目に浮かぶようだった。

「今晩の夜伽当番には、しっかり役目を果てしてもらわねばな。
 明日のモーニングコールは念入りにするよう、後で支持を送らねば」

もちろんその他にもしなければならないことは山ほどある。
啓太へのフォロー、自分が倒れていた間の仕事の穴埋め。
ファミレス『デリシャス』を襲った組織の調査に、アパレント・アトムの戦力の増強などに地上勤務班の安全確保の練り直しなど、問題は尽きない。
身体に残った培養液を清潔なタオルで拭き取り、片付ける問題の優先準備を考えていると。
カルテへの記入を済ませたチェスが、医者として退院する気満々の患者に苦言を呈す。

「くれぐれも無茶をするなよ?問題ないと言っても、私たちにわかる範囲での話だ。
 いつまた身体に変調をきたすかわからないんだぞ?」
「お気遣い無用。私が動かねばクロックのヤツがまた何をするかわからんからな。
 啓太様のためにも、ずっとは寝ていられんさ」
「・・・オマエがまた倒れたら、啓太様がまた心配するぞと言っているんだ。
 残念ながらまだ退院を許すわけにはいかんな」

啓太の名前を出され、夢は思わず身動きを止める。
こういうとき、ブラックボックスである自分の身体が恨めしい。
夢はいまだ思い出せぬ自分を作った科学者に向けて、呪詛の念を送ってやった。
チェスはマッドサイエンティストではないが、自分の職務には忠実だ。
おそらくしばらくは退院させてくれないだろう。
夢の復帰はまだまだ先の話のようである。
こうして啓太にとって長い長い1日がようやく終わった。
そしてまた新しい朝日が昇る。新たな希望と絶望を携えて。

――――

「う・・・ん・・・」

啓太は夢を見ていた。それは自分らしからぬ選択をしたことへの後悔と罪悪感の産物。
夢の中の啓太は子供となり、同じくらいの子供たちからいじめられていた。
彼らは自分のことを『人殺し』『うそつき』などと悪口を言い、手に持っていた小石やゴミなどを投げつける。
啓太は夢の中で必死に違う、そんなことはないと言い返すが誰も信じてくれない。
そして彼らの陰湿ないじめに耐え切れなくなった啓太は、いじめっ子たちの包囲網を突き破って逃げていく。

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