世界の中心で平和を叫ぶ。第2部 105
いきなりの抜け駆けに怪人たちからシュプレヒコールがあがるが、後でチャンスとポイントを与えると約束することで黙らせた。
そして啓太をやわらかそうなベッドに突き飛ばすと、突然啓太の顔をひっぱたいた。
「・・・あ?」
突然のビンタにきょとんとする啓太。
クロックはかまわずビンタを連発する。
パン、パン、パン、パンパンパンパン、パパパパ・・・ッ!
「ちょ・・・!クロ・・・!痛・・・!や・・・!」
だんだん、間隔が短くなっていくビンタの嵐。
最初は驚くだけの啓太もさすがに抗議の声を上げるがお構いなし。
ひたすら啓太の頬を張り続ける。
そして痛みが許容量を超えたとき、啓太はブチ切れた。
「・・・ってえだろ、このバカッ!」
バンッ!
激しい張り手を食らい、吹っ飛ばされるクロック。
しかしキレた啓太は止まらない。
怒りのままに啓太はクロックに覆いかぶさった。
トサッ・・・。
ベッドの上に倒れたクロックと彼女に馬乗りになった啓太。
その姿はどう見てもか弱い女に襲いかかろうとする男にしか見えない。
あのおとなしいヘタレの啓太にこんな一面があったとは。
だが啓太はそこから一歩も動かなくなる。
よく見れば小刻みに震えており、何か困っているような、そんな顔をしている。
(し、しまった・・・!つ、つい勢いに任せて押し倒しちまったけど・・・ど、どうしようっ!?
ささ、さすがにここまでやっといてごめんなさい言うのも変な話だしっ!)
・・・やっぱりヘタレはヘタレであった。
どうやら勢いに任せて押し倒したはいいが、そこで正気に返り、身動きが取れなくなったようだ。
そんな啓太の様子を、冷たさすら感じさせる視線でクロックは見続けていた。
「・・・そんなに私を押し倒したことが恐ろしいですか?
これから町1つを支配しようとする男の姿とは思えませんね」
「・・・!?」
クロックの言葉に啓太は言葉を失う。罪悪感と怒り、自己嫌悪などが次々と浮かび上がってぐちゃぐちゃに交じり合う。
自分の感情があふれ、心の整理が追いつかないようだ。
だがクロックはその鋭い視線を啓太から話すことなく言葉を続ける。
「あなたはいつもそう。
心のうちにはちゃんと自分を持っているのに、あなたはそれを表に出すことができない。
あれだけ引っ叩いても、ほんの一瞬怒るだけ。
あなたは一体何に遠慮してるんですか?」
「あ・・・う・・・」
クロックの言葉に啓太は答えに詰まる。
彼女は主人の答えなど期待していなかったらしく、そのまま言葉を続ける。