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世界の中心で平和を叫ぶ。第2部
官能リレー小説 - SF

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世界の中心で平和を叫ぶ。第2部 103


『おおッ!!』

その言葉にいっせいに鬨(とき)の声を上げたのは例の行き場のない戦闘型の怪人たちだ。
他の怪人たちも啓太の突然の発言に驚きと戸惑いを見せていたが、主人の命令とあっては逆らう余地などない。
彼女らも動揺しつつも、恭順の姿勢をとった。
それを見てクロックはほくそ笑んだ。
全ては彼女の思い描いたとおりであった。
主人である啓太が決めた以上、その下僕である自分たち怪人はそれに従わざるを得ない。
これでアパレント・アトムは生まれ変わる。
まずはこの町を手始めに、その支配領域を広げ、最終的には世界を牛耳る。
そしてその頂点に立つのは、支配者として生まれ変わった啓太。
おびただしい屍の山々と海を思わせる血の海。
敵、味方、第3者問わずに積み上げられた死体の山は啓太を否が応でも変えるだろう。
その果てにあるのは死と恐怖を撒き散らす絶望の使者か、世界の平和を維持するための調停者か。
それはどちらでもかまわない。クロックの目的はただ1つ。
主人である啓太とその組織を至高の存在に作り変え、そのために自身の心血を注ぐこと。
クロックはただただ満足げに、笑顔を浮かべるばかりである。
そんな中、歓喜にざわめく怪人たちからある提案が持ち上がった。

「啓太様。このたびのご決断、我々一同、まことにうれしく思います。
 つきましてはこのたびのご英断と景気づけに宴を催そうかと思うのですが、いかがでしょうか?」

周囲の怪人たちから持ちかけられた提案に、次々と賛美と同意が持ち上がる。
おそらく啓太の決意が鈍らないように、主人である啓太を持ち上げて後戻りする気をなくそうとする考えもあるのだろう。
啓太としては、こんなうれしくもないことのために宴会などしたくないだろうが。
しかし啓太とまったく逆の心境であるクロックは、そんな企てとは別に、純粋に啓太に感謝の気持ちを表したいという思いがあった。
少なくとも、啓太が動かなければ今の状況はなかったのだ。
クロックにしては珍しく、気分が高揚して人間らしい感情が表に出かけていた。

(そう・・・だな。怪人たちのこともあるし、何より啓太様に感謝の意思を伝えたい。
 啓太様のお心をお慰めする意味合いもかねてするのもいいか)

クロックは啓太の下に近寄るとそっと小声でささやいた。

「啓太様。つらい選択をされて宴などする気になれないかもしれませんが、みな啓太様のお役に立ちたいのです。
 彼女らの気持ちも汲んでくださいませ。
 それに何より、啓太様のそのようなお顔を見続けることは我々もつらく思います。
 せめて今日の宴でそのお気持ちを少しでも晴らしてくださいませ」

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